第10章 【第七講 前半】修学旅行のハプニングはベタ中のベタでよし
「山崎、タオル取ってもらっていい?」
部屋に残されたのは○○と土方、山崎の三人。
山崎は○○にタオルを手渡した。
「ありがとう」
足首にタオルを巻き、きつく縛って固定する。
「氷水とか持って来ましょうか」
「ううん。大丈夫」
幸い、痛みはない。
しばらくしたら歩けそうだ。
「もうこんな時間だし、お風呂でも行ってくれば?」
時刻は午後八時前。
自由時間は午後九時まで。
夕食の後の時間を見廻りに費やしていた彼等は、まだ修学旅行初日の夜を満喫していないだろう。
「じゃ、そうさせてもらいます。副委員長も風呂行きますか?」
山崎は、広縁の椅子に腰かけている土方に声をかけた。
「俺ァ、一服してから行く」
「一服って、何を一服するんですか」
こちらでは高校生設定。タバコは御法度だ。
「一服は一服だ。さっさと風呂行け」
じゃあ行って来ますと言い残し、山崎は出て行った。
「一服って、何を一服するつもり?」
まさかタバコじゃあるまいなと、○○は眉間に皺を寄せる。
「一服っつったら、コレに決まってんだろ」
土方は冷蔵庫を開けると、その一本を取り出した。
「あ、マヨネーズね……」
「お前も吸うか」
「いえ、結構です」
思わず丁寧な口調でお断りする。
「よく没収されなかったね」
「巨大マヨネーズボトルでカモフラージュしたからな」
持ち物検査の時、土方は業務用サイズのマヨネーズボトルを没収された。
だが、この一本がバッグの奥底に隠されていることに、銀八は気づかなかった。
「ていうか、マヨネーズに関しては規則破りまくるよね、土方くん」
普段、規則だ校則だとうるさいが、野球のボールにマヨネーズを塗りたくったり、こうして違反を犯して修学旅行に持ち込んだりと、やりたい放題だ。