第5章 *LIB ナイトメア・ビフォア・クリスマス*
始まりは演奏家たちによるこの祭りを盛り上げる音楽からだった。散々試行錯誤したおかげで、当初聞いた虚しくなるような音色はなく、ハロウィンを象徴とするような恐怖を煽り、それでもどこか聞く者を高揚させるような素晴らしい曲が奏でられる
レオナ・ジャミル・セベクを中心とした歌声は、町を練り歩く中で様々な住人たちをも巻き込み、1つの音楽となって響き渡る
ジャミルの提案でもあったパレードは、最後に現れたジャックが一層の盛り上がりを見せた
藁で出来た馬、その上に跨がるカボチャの頭に藁の服に身にまとったジャックは、燃え上がる炎に包まれながら、手綱を引くスカリーの先導で広場の噴水までたどり着くと、大きく火を吹きセベクたちを驚かすと、噴水に飛び込んだ
そして被り物を捨て本来の姿でゆっくりと登場し、皆に囲まれて堂々と君臨する様はまさに、この町の支配者たる王の姿に相応しいものだった
万雷の拍手の中、音楽とパレードが大成功に終わると、トレイたちが必死こいて作った料理やお菓子が振る舞われる。それを美味しそうに食べながら、街中を鮮やかに彩る色とりどりの飾りに、全員が感嘆の声をあげ楽しそうにしていた
初めて味わう、音楽と料理と飾りに囲まれながら大勢で楽しむハロウィンに、スカリーは形容し難い興奮に身をふるりと震わせた
スカリー『ハロウィンとは恐怖。ハロウィンとは憧れ。ハロウィンとは悪夢。思い続けていた理想は正しかった。でも..それだけではなかった』
目の前に広がる色鮮やかな世界。ツイステッドワンダーランドとハロウィン・タウンの住人たちが交流し、どこからかも聞こえる笑い声と少しの諍いの声
その全てが彼の心を大きく揺らし、まるでそれら全てを心から愛するように、その瞬間を永遠にするように長い腕で抱き込んだ
スカリー『こうやってたくさんの人と、恐怖と喜びを共にできるから、ハロウィンは素晴らしいんだ!こんなにも恐ろしく、こんなにも楽しい時間はハロウィンの他にはない。
我輩はこれから、我輩の人生を懸けて、ツイステッドワンダーランドに伝えましょう。
ハロウィンは..賑やかで、派手で、豪勢なものなんだって!』