第17章 この話はもう終わり《後編》◉山田ひざし※
「全部ぜんぶ・・っ!マイク先生のせいです・・!」
助手席第一号だとか、下の名前で呼んでみろとか、いつも揶揄ってくるのにめぐちゃんって呼ぶ声は甘くてドキドキするし・・っ、なのに勇気出してお昼誘ったら・・マイク先生を誘ったのに!
ぼんやりと暗い照明の下、皺だらけになったシーツの上で乱れる彼女が恨めしそうに眉根を寄せる
「安心して恋人ごっこって何ですか・・っ」
ひどいです、快感に抗う息をあげながら、赤い顔が真っ直ぐにオレを睨んだ
「あんなにお酒飲んだの、初めて・・!」
ぜんぶマイク先生のせい、か弱い爪が自身の背中にぎゅっと食い込むのを感じて、ドクドクと煩い胸の音で頭が逆上せていく
「恋人ごっこなんか、私しません・・っ」
や、もう抜いてください、なんてふるふると首を横に振って
聞けるはずのねェその声を塞ぐように、唇を貪って舌を絡ませた
「ふ、あ、やだ・・っ」
「・・・オレの事、超好きじゃんか・・」
「そ、そう言ってるでしょう!」
緩やかな律動をまた早めるとぽろりと頬を流れた一粒、吸い付いた膨らみにいくつも跡を残して
「はぁっ、や、んん・・っ」
「めぐちゃん、コッチ見て」
「ぃや、です」
「はは、かーわい・・」
薄く染まった身体が小さく反り返ると同時に吐き出した熱、まだ繋がって居たくて唇を押し付ける
啄むように必死に繰り返される口付けと背中に走る小さな痛みが、この上なくオレを幸せにした
「わり、停めたの結構向こうでさ」
彼の手で車の鍵が軽い音を立てる
自動ドアが左右に開くと吹き抜けた冷たい風、朝の通りは夜と違ってとても静かだ
「お手をどうぞ、マイレディ」
「ふふ、ありがとうございます」
差し出されたそれに自分の手を重ねると指先が私の掌をつ、となぞって
余裕ぶったその笑みを今すぐ壊したくて、私はその胸に飛び込んだ
「おっとォ、意外に大胆だなァ!」
へらりと笑った彼が降参したように両手を挙げる
それがまた悔しくて、私は大きな背中に腕を回し顔を埋めた
「、道端で抱きついてしまうくらい」
ひざしさんが足りないんですよ、精一杯の皮肉を込めて呟いた声は効力を発揮しただろうか
挙げられたままの両手の動きが止まる、頭上から長い長い溜息が聞こえて、私は笑みを深くした