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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第17章 この話はもう終わり《後編》◉山田ひざし※



「・・とびきりのデートプランを考えてたってのによ」

ドライブ、映画、カフェ、夜景の見えるレストラン、ひとつずつ指折り数えながら、赤い顔を歪ませた彼が私を見下ろす


「ぜーんぶナシ!」

「え、なんで・・っ」

「引き篭もり溺愛プランに決定!」

早足で進む大きな歩幅、強引に腕を引かれ両足が縺れると、彼は両手で私を抱きかかえた


「ひゃっ、ちょ、おろして・・っ」

「ヤダね」

ちらほらと道行く人がこちらを見ている、ビルの合間からは朝陽が覗いて
一気に熱くなった顔を両手で隠すと私は思い切り下を向いた



「足りねェよなァ」

くつくつと笑いを堪える声の向こうにドアの開く音、冷たい革のシートが背中を冷やして
外からシートベルトを差し込んだ彼が名残惜しそうに甘く口付けた



「相澤先生以外の・・話がしたいです」

驚きに見開いた目が優しく細められると、大きな手がくしゃりと髪を撫でて


「トピックなら腐るほどあるぜ」

オレを誰だと思ってる、歯を見せて笑った彼の首元に腕を回してそっと口付けた


「あんなつまんねェ話はもうナシな!」



















———


「え〜〜〜と、相澤クン?」

「ひっ」

バンッ!と大きな音を立てて床に叩き付けられた誌面、モノクロの文字がでかでかと刻まれている


【プレゼント・マイク衝撃の朝帰り写真!】
【朝のホテル街、車内で熱烈キス!】



「・・・自分が教師だという自覚はあるか」

地を這う声、ギリギリと締め付ける捕縛布に息も絶え絶えなオレの横で、正座をした彼女が震えている


「すびばせんでした」

「反省文じゃ済まねぇぞ、何考えてんだ」

お前もだ、ぎろりと睨まれた彼女がこれでもかと小さくなって、相澤が大きく舌打ちをした



「ふふ、もう結婚しちゃえばいいんじゃない?」

楽しそうに誌面をなぞった香山さんがクイッと彼女の顎を上げて、深い笑みを浮かべながらその唇に指を這わせる


「ねぇ校長?」

「うむ、私も同じ事を考えていたところさ!」


懐から取り出された薄い紙、溜息をついた相澤がオレの抽斗を開けて印鑑を手に取る


自業自得とは言え急すぎる展開に恐る恐る見遣った彼女のカオ、

香山さんの持つ朱肉よりも赤くなったその頬を見ようと、オレは両手の使えない身体を必死に揺すってサングラスをずらした
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