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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第17章 この話はもう終わり《後編》◉山田ひざし※



カチャリと掛けられた内鍵の音、薄暗い照明の部屋は外の喧騒が嘘のように静まり返っている

やっとのことで降ろされたベッドの上、目を泳がせた私の横に彼は静かに腰を下ろした


「さっきはホントにホントにゴメン・・!」

オレ最低な言い方したよな、悲痛に歪むその顔には後悔がありありと滲んで、恐る恐る伸ばされた指先が私の涙の跡をなぞる


「、好きなコ泣かしちまった」



「いえ、あの・・、それより私・・」

それ・・聞きたいです、図々しいと分かっていても言わずにはいられない、服の裾を掴んでその目を覗き込むと、彼の顔がみるみる赤くなった


「わ、私の、片想いじゃないんですか・・?」



「・・超好きなコが、恋愛相談してくンの」

気が狂いそうだったよ、恨めしそうに呟かれた言葉が私の胸の奥をぎゅ、と掴んで
ゆっくりと絡められた指先が熱くて、逆上せてしまいそうになる


「アイツの事話してる時、すげェ可愛いカオするし」

「そ、それはマイク先生と居られるからで・・っ」

夏頃にはもう私、そう言って目線を上げればぐっと近づいた距離、優しく何度も喰んだ唇がじわじわと熱を持った



「・・き、もち良すぎます、ね」


「ったく、もおおお」

ココが何処か分かって言ってんなら、呆れた顔で眉根を寄せたマイク先生が私を睨んで
その視線が舐めるように身体中を滑っていく


「めぐちゃんのそういうトコ、マジで油断ならねェのよ」

「何言ってるんですか、マイク先生にしか言いませんよ・・!」

「他の誰にもスキとか言わねェ?」

「当たり前じゃないですか・・!」

慌てて言葉を発すると、じとっと此方を見つめた彼がいつもより低い声音を私の耳に流し込んだ



「でも実際、今まで散々聞いてきてンだよなァ」

アイツの何処何処が好き、ってよ
彼らしくない無機質な声が鼓膜を震わせると急に反転した視界、大きな手が私の頬を包んだ


「・・・信じさせてくれよ」

無造作にテーブルに置かれた眼鏡、不安気な視線が私を貫く
先ほどよりも荒々しい口付けに舌も呼吸も奪われると視界がぼやけていった


「ふ、ぁあ・・っ」

「アイツよりオレだって言うんなら」

なぁ証明してくれよ、縋るような目がじっと私を見つめている
こくこくと頷いて首元に唇を寄せれば、マイク先生は悩まし気に息を吐いて髪を掻き上げた
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