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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第17章 この話はもう終わり《後編》◉山田ひざし※



「頼む」、「電話出て」、既読が付いたことを確認し躊躇なく押した通話ボタン、何度鳴らしても一向に声が聞こえる気配は無い

「いまどこに居んの」、既読が付くだけマシかと浅く息を吐いて乗り込んだ運転席
エンジンをかけると動いたメーター針の手前、転がるそれを口に投げ込んだ




——— マイク先生には関係ないです

温度の無い言葉が閉ざされた心を示して、後悔の冷や汗が滲む
彼女のアパートを目的地に車を走らせながら、何度も繰り返し通話ボタンを押し続けた












「もう・・!鳴らし続けるのやめてください!」

迷惑です、何十回目かでやっと聞こえたその声、棘のある言葉にも安堵の溜息が漏れて、溢れ出る想いが堰を切ったように流れていく


「いい加減にしないと電源切りますから!」


「、めぐちゃん、オレ」

君が好きだ、情けなく漏れ出た声に彼女が息を呑む音がする

無言の一瞬、彼女の後ろで聞こえたのは自身の馬鹿でかい声
特大広告塔用に特別収録したそれは中心市街の一箇所でしか流れていないはずだ


「マイク先生・・な、なに言って」

「迎えに行くから、頼むから、そこに居て」

進行方向から大きく方向転換しハンドルを切るとアクセルを思い切り踏み込んで
口の中に転がる甘い粒をガリ、と噛み潰した
















———



雄英からそこまで離れていない中心市街、この時間はすでに夜の繁華街と言った具合だ

道端に車を停め音を立てて開けたドア、一帯の路地をしらみ潰しに駆け回って






やっとの事で見つけたその後ろ姿、よりによってこんな治安の悪い裏路地かよ、と悪態をついて背後に近づいた


「・・っこの辺は危ねェよ?おねーサン」

息を整える間もなく肩を抱けば、オレを見上げたその目からぽろぽろと涙が溢れ落ちる


「だ、ってそこに居ろ、って」

「マジで動かなかったのかよ、あーもう・・!」

可愛すぎんだろ、燃えるように熱い顔を片手で覆うとひょいと彼女を担ぎ上げて
羞恥に暴れた身体の温度に、バクバクと心臓が煩い


「あー、好き」

「あの・・っ、マイク先生・・!?」

「わり、もう限界だわ」


やけに見覚えのあるその看板を見遣ると漏れ出た自嘲
今ヒーローに来られちゃ現行犯、そんな事を考えながら自動ドアの奥に足を踏み入れた
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