第17章 この話はもう終わり《後編》◉山田ひざし※
並んだ蛍光灯が余すことなく部屋中を照らしている、ひとりの空間にしてはたいそう贅沢なそれを仰ぎ見てどれ位の時間が経っただろうか
窓ガラスには結露した雫、温度差に曇った白が外の夕闇をさほど感じなくさせている気がする
そんなことをぼんやり考えているとカラカラと静かに開いた扉、
その音に飛び跳ねんばかりに振り返ると、怪訝な顔の相澤が思い切り眉を顰めた
「山田お前、まだ居たのか」
午後仮眠してその後徹夜するのがコイツのルーティン、すっかり忘れていたそれに溜息が漏れる
「お前も徹夜か?」
「ンなわけ」
「彼女は帰ったんだな」
てっきりお前と一緒かと思ってたよ、真横で何気なく呟かれたその一言に頭に血がのぼる思いがした
「・・白々しくてムカつくヤツだぜ」
「あ゛?」
売られた喧嘩は買うとばかりに凄んだその顔、頭に来たオレは乱暴にパソコンの電源を落として立ち上がった
「何が言いたい」
「・・彼女、めちゃくちゃ一途だからよ」
「今のところその印象は全く無いな」
「泣かせたら、たとえオマエでも許さねェ」
睨み合って数秒、肺の空気を出し切るかのような大きな溜息が響き渡る
心底呆れた目がオレを凝視して、苦虫を潰したように相澤は顔を歪めた
「はぁ・・、お前なんか勘違いしてないか」
「あんま煽んない方がいいぜ、オレァ今気が立ってんだ」
「めんどくせえ・・」
深入りしたくないが一つだけ教えてやる、殆呆れたその声が耳に届くと、目の前の男は笑みを隠すように口元を捕縛布に埋めた
「・・共通の話題が、俺の事しか無いらしい」
「あァ!?そーだようるッせェわ!」
「はぁ」
「え、!?な、なんっ、でオマエがソレを・・!」
行った行った、歪んだ口が悪態をつくと相澤の左手がしっしっとオレを追い払う
「話題不足か、ラジオDJも形無しだな」、
背後に聞こえた嫌味に小さく舌打ちをして、オレは全速力で廊下を駆け出した