第13章 お決まりでしょうか◉共通ルート《後編》
本来のヒーロー活動とは別に、ショートは芸能面での人気も群を抜いている
テレビや雑誌、インタビューやCMにファンイベント、家でも街中でも轟くんの顔を目にしない日は無いのだ
突き抜ける青、気持ちよく晴れた日曜日の空を眺めながら、私は絶望に満ちたその声に耳を傾けた
「・・今日はオフの予定だったのに、悪い」
テーブルの上のお花が萎みかけている
項垂れたその姿が目に浮かんで、私は努めて明るい声を出した
「気にしないで!頑張ってね」
「夜はぜってぇ会いに行くから」
「そんな、無理しないで大丈夫だって、」
「俺が大丈夫じゃねぇ」
恨めしそうに呟かれた声にどきりと胸が嫌な音を立てる
私はいつまでこうしているのだろう、轟くんの真っ直ぐな想いはいつも私を落ち着かなくさせて、会うたび流されてしまいそうな自分の気持ちにも自信が持てなくなっていく
悶々と過ごす夜はすっかり生活の一部となり、空腹を感じることも少なくなっていた
「めぐ、今日もお前が好きだ」
毎朝囁かれるこの言葉が、苦しい
彼の求める言葉を決して口にせず「ありがとう、」としか返さない、私は狡くて心底最低な女だ
口を付けないまま冷め切ったコーヒーをぼんやり眺めると視界に入った鏡、そこに映る自分は間違いなくお気に入りの洋服を身につけていて
大きな溜息を破ったのは突然鳴ったインターホン、ドアを開けると強気に睨んだ彼が私を見て顔を顰めた
「なんちゅう顔しとンだ、行くぞ」
「えっ、なん、で」
「粧しこんで準備万端のクセによ」
私の全身を眺めた赤い瞳が一瞬苛立ちに曇る、
心の中を読まれそうで逸らした目はお気に入りのショートブーツを捉えて、私は大声で泣きたくなった
———
「食え、死ぬまで食え」
「こんなに食べられないよ・・!」
「どう見ても、まともに食ってねェだろが」
テーブルには鮮やかな料理が並び、爆豪くんがそれを取り分けては私のお皿にこれでもかと盛っていく
「病んでんじゃねェ、ヘボメンタル」
「・・ごめんなさい」
「ンな顔しとる位なら、はっきり言ってやれよ」
“重すぎてキメェ”ってよ、そう言ってにやにや笑った爆豪くんが挑戦的な目で私を見つめる
「最っ低、!」
自分への怒りを全て彼にぶつけるように、私はフォークを握ると思い切りサラダを頬張った
