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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第13章 お決まりでしょうか◉共通ルート《後編》


「、二人とも早朝から元気だね、」

「・・爆豪とはもう話したんだな」

その声は静かな怒りを孕んでいて、私は慌てて話題を変える


「これから出勤かな?気をつけてね」

「・・終わったら、会いに行ってもいいか」

「えっ・・と、今日・・?」

「毎日」

俺焦ってんだ、昨日爆豪に取られたから、
その切実な口調はとても冗談には聞こえなくて、私はぱちぱちと瞬きをする

「迷惑だって分かってんのに、抑えらんねぇ」

「、毎日は・・ほら、大変だし・・!」

「幻滅するよな、ごめん」

今にも泣き出しそうなその声に胸の奥がきゅうっと痛くなる、気づけばいつも彼のペースに呑み込まれているのだ


「・・めぐは、爆豪が好きなのか」

「えっ、いや、まだその」

「俺を選んでほしい」

彼らしいストレートな言葉と態度に、心を大きく揺さぶられている
その甘い胸に飛び込んだらどんなに幸せなのだろう、そう思うのに、昨晩涙を拭ってくれた温かい手は私をぎゅっと掴んで離さないのだ


「家にあげろとか言わねぇから、お前ん家の近くまで行かせてくれ」

「、でも」

「遅くなったら寝ていい、返事が無かったら帰るから」

あまりにも強引で、それでいて健気なその提案に私は言葉を詰まらせる
鏡に映る自分が心底驚いた顔をしていて、私は自分を睨みつけた

「何も言わねぇってことは、嫌じゃねぇってことだ」

また連絡する、嬉しそうに呟いた轟くんに結局乱されてぐちゃぐちゃになった胸の中、何も聞こえなくなったスマホを私はいつまでも耳に当てているのだった







———


「そう、なるよね・・!?!?」

帽子にサングラスにマスク、冬の夜じゃなくたって怪しすぎるその出で立ちに、私は思いっきり周囲を警戒する
ただでさえ目立つ長身の彼はこれでもかと道ゆく人たちの視線を集めていて、咄嗟にその手首を掴むと人気の少ない路地へと誘導した


「あの、やっぱり、あがってく・・?」

言わざるを得ない、完全なる不審者ルックの轟くんが毎晩現れたら、私の平穏どころかここ一帯の治安にまで影響するに決まっている

「玄関、なら」

「いいのか、俺何するかわかんねェぞ」

「じゃあもう、来ちゃだめ・・!」

「そんなこと・・言わないでくれ」

あからさまに傷ついた表情の彼はしょんぼりと肩を落として、私の手を強く強く握りしめた
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