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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第12章 お決まりでしょうか◉共通ルート《前編》


夜風の気持ちよさに深呼吸して目を閉じると、お店から出てきた轟くんがまるで介抱するかのような手付きで私を支える

「大丈夫か、帰れるか」

「だ、大丈夫、お酒飲んでないし!」

思わず振り払ってしまったその手に彼の顔が切なげに一瞬歪んで、私は慌てて笑顔を作った


「困らせて、ごめんな」

逸らされた目が悲しそうに伏せられて、私はまた言葉に詰まってしまう
睫毛越しに二色の瞳が街灯に煌めくとそれは星屑のように綺麗だった


「でも俺、本気だから」

「う、うん、ありがとう」

「タクシー呼ぶから、送ってもいいか」

家にあげろとか言わねぇからよ、そう言った轟くんが私の頬にそっと触れて
その優しい手付きに魔法がかけられたように動けなくなって、ただ彼を見上げているだけの自分の狡さが嫌になる


「何も言わねぇってことは、嫌じゃねぇんだな」

そう言って嬉しそうに微笑んだ轟くんがスマホを手にした時、大きなエンジン音を響かせた車が路地に入り込むとそれは私たちの前でぴたりと停まった






「送る」

バンッ、と開いたドアから降りた爆豪くんが、私と轟くんの前にずかずかと歩み寄る
刺すような視線で私を見下ろすと、両手をポケットに入れたままの彼は腰を屈めて私と目線を合わせた


「送るつってんだろが」

「悪いな」

「テメェじゃねェわ!!!」

思わず吹き出した私を睨みつけると、彼は助手席のドアを開けて
タクシー待つより早ェんだわ、そう悪態をついて私の手首を引いた


「早よ来い、めぐ」

「「「お」」」

「散れやザコ共が!」

初めて呼ばれた下の名前に反応するよりも早く、掴まれた手首に伝わった彼の体温
シートに座りその手が離れると同時に彼の汗が私を冷やすのを感じる


「と、轟くん、!また、ね!」

とてつもない剣幕の轟くんにお礼を言おうと車の窓を開けると、それが言い終わらないうちに窓ガラスが自動で閉まっていく
顔を引き攣らせた彼が一帯を凍らせてしまいそうな冷気を放って、ガラスを白く曇らせると爆豪くんがまた挑発的に笑った
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