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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第12章 お決まりでしょうか◉共通ルート《前編》



「そろそろって、何が・・」

「わかれよクソ鈍感」

溜め息に悪態を乗せた声が私の耳元で響く
息のかかるその距離に横を向けるはずがなくて
正面を見てただ視線を泳がせる私を、轟くんがじっと見つめている

こんなに逃げ場の無い状況、未だかつて経験したことがないことだけははっきりと頭で認識していた



「薬師への気持ちを、」

「俺ァもう我慢しねェ」

「俺たちは、な」


「あの・・!緑谷くんんん・・!?!?」

今度こそ助けて貰おうとしっかりと名前を口にして隣のテーブルを見ると、ケラケラと笑うお茶子ちゃんの隣で私と同じくらい赤面している緑谷くんが居る

「僕もなんていうか、、あの、本当に応援してて・・!」

何の助け舟にもならない、私を救えるとしたらきっと緑谷くんしか居ないのに・・!
必死に目で訴えても、グッと握られたその拳が私に励ましを送るだけだ


「えっとあの、つまり、わ、私・・?」

私たちの学生時代は全面戦争とその復興、怒涛の日々の中で迎えた卒業式を昨日のことのように覚えている

医療の道を志した私も学生ボランティアとして復興現場で活動し、二人の雄姿は数えきれないほど見てきていて





だからこそ、だからこそ、一度もそんな風に思ったことは無かったのだ



「い、今まで二人をそんな風に見たことがなくてね」

「わーっとるわ」

「今日からでいい」


他の女子生徒同様、二人への憧れの気持ちが芽生えた事はあったかもしれない
だけどそれは恋愛対象というよりも「尊敬」と名付ける方がずっとしっくりくるようなものだった


「お前のことが好きだ、薬師」

「俺より先に言うんじゃねェ!」

「めぐって呼んでいいか」

「話聞けやコラァ!」

雑談のようにさらりと語る轟くんに、目の吊り上がった爆豪くんの怒声
懐かしく、そして見慣れた応酬にこんなにも大きな違和感があるのは、間違いなくその話題の異質さのせいだと思う


「え、そんな、いつ、から・・」

「合同授業が始まった頃から」

「ハッ俺の方が早ェわ、ザコが」

爆豪くんが舌を出して威嚇すると、轟くんの眉間に深い皺が刻まれていく
拘束された手足に二人の苛立ちが直様反映されて、私は喉がからからになった
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