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《ヒロアカ短編集》角砂糖にくちびる

第12章 お決まりでしょうか◉共通ルート《前編》



「ん」

「あ、ありがとう」

ご丁寧に開かれた飲み物のページを見ると横から感じる威圧的な視線、なんとか飲み物を注文し終えた私はちらりと彼を窺う


「ど、したの、そんなに見ないでよ・・」

「悪ィかよ」

意地悪に歯を見せて笑った爆豪くんが私の持つそれに手を伸ばして
メニューを立てかける位置は私の方が絶対に近いのに、彼は私の前に腕を回すと丁寧にそれを壁際へと戻した


「雄英で働くなんて、緑谷も薬師もすげぇな」

信頼されてるってことだろ、そう言って誇らしげに微笑んだ轟くんが優しい眼差しを向ける

オフのショートが繁華街に現れたらきっと大変な騒ぎになってしまうのだろう、
今晩のお店がいつもと違うのはおそらく彼に配慮した結果だ


「轟くんこそ、今回のチャート2位本当におめでとう」

私がそう言うと、少し複雑そうに笑った彼が「ありがとう」とはにかんで
きっと私の想像を超える大変さがあるのだろう、控えめに差し出された彼のグラスに私は自分のそれをそっとぶつける

小さな音を立てて二つが離れると、隣から唯ならぬ剣幕を感じて
差し出された彼のグラスはしゅわしゅわと音を立てていた

「えっあっ、もちろん15位も本当にすごいよ!」

「いじってンじゃねェ!」

顔を顰めた爆豪くんが少し乱暴にグラスを当てると、隣のテーブルにいるお茶子ちゃんの吹き出す音がした


彩り豊かな料理が運ばれると自然と始まった思い出話、歴史に刻まれる闘いの中心に居たとは思えないほど他愛のないそれは、私たちをいつだってあの頃に引き戻してくれる

離れていてもみんなどこかで頑張っている、そう思うことでどうにか乗り越えた社会の荒波も数知れない
私も誰かのヒーローにと、ここに居る面々に背中を押され踏み出したあの時の誓いの先に今があるのだ
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