第10章 return
「それ言うならお前だって俺がホワイトデーにあげたアップルパイ味と納豆味うまそーに食ってたじゃねーか」
「あれはまぁ…そんなに抵抗なかったし。
アップルパイも納豆も好きだし!」
2人はしばらく真剣に睨み合ったあと、
同時に思いついたようにため息を吐いた。
「あいつだな、こーなったら」
「だね。それしかないね。」
場地がその人物に電話をかけ、
コップを3つ用意し、うち2つにファンタを注いだ。
一緒にそれを飲みながらランは場地の顔をのぞき込む。
「ねぇいつまでガリ勉スタイルでいんの?」
「ん、あぁ。忘れてた。」
そう言って髪を解き、メガネをとった。
「うん、でも圭介はどっちも似合うね。ははは!」
「思ってねーだろ。勉強するときはこうじゃねーとヤル気でねーんだよ」
圭介、中学留年してるからちゃんと勉強頑張ってるんだな〜偉い偉い。
そう心の中で言いながらニッコリ笑う。
こないだ三ツ谷を殴ったことなどいろいろ聞こうと思っていたのにすっかり忘れてしまっていた。
「一緒にスイーツ食べよーよ」
「お前用のどら焼きならうちにあるよ」
そう言って場地は冷蔵庫からランの好きなどら焼きを取り、ポイと投げてきた。