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☆一夜の夢☆〈イケメン戦国 上杉謙信〉

第2章 夜を忍ぶ


気持ちが落ち着いた頃、私はぽつりと本音を言った。


「でも少し羨ましいです」


謙信様が目を見開き、こちらを凝視した。
二色の瞳が驚きの色を滲ませている。


謙信「何が……羨ましいと?」

「そのように想い、想われる相手に出会えたことがです」


怒られても仕方ないと感想を述べた。

謙信様のまわりではこの話はタブーになっている気がしたから。
率直な意見を謙信様に言う人は居ないと思って、正直に話した。


「日ノ本には大勢の人間が居ますが、一人の人間が一生で出会える人数なんてそう多くはありません。
 その中からたった一人、深く愛し、愛される人に出会えたこと…羨ましく思います」


瞬きもせず謙信様がこちらを見ている。
私の言葉を理解しようとして消化できていないような、そんな顔だ。


(こんなこと言ったら怒るかな…でも)


怒られても嫌われてもいいかな。
だって謙信様に伝えたい。

私が伊勢姫様だったら…


「自ら死を選ぶなんて、どれほどの覚悟だったか想像もできませんが……私なら死の瞬間に、愛する人を想うと思います」


謙信様の手が膝の上でギュッと握りこぶしを作ったのが見えた。


「命をかける程に愛した人が居て、その人を残して逝かなければならないのなら…」


次の言葉が届いて欲しいと願いをこめる。


「愛した人がずっと幸せでいられるように、ずっとずっとその幸せが続いて、生きて欲しいって、私なら思います」


束の間の沈黙が訪れ、謙信様の押し殺したような声が響いた。


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