第17章 殺したくてたまらないという顔
コンコン、とかたいノックの音が静かな廊下に響き渡った。
「アリア・アルレルトです」
背中で手を組み、声を出す。
一瞬の間があり、ドアノブが捻られて戸が開いた。
「アリア」
開けてくれたのはハンジだった。
アリアの姿を見ると、嬉しそうに笑う。アリアはその微笑みに緊張した頷きを返し、部屋の中を見渡した。
「──エレンっ!」
そして、そこにいた彼を見た瞬間悲鳴にも似た叫びが溢れた。
エレンはソファに身を小さくして座っていた。
その顔は腫れていて、鼻には乾き始めた血がこびりついている。
隣にどっかりと腰を下ろすリヴァイに怯えているようだった。
「アリア、」
掠れた声で名前を呼ばれる。
アリアはエレンに駆け寄った。
会ったら話そうと考えていたことは、いつの間にか全て消えていた。それくらい彼の姿はアリアに衝撃を与えたのだ。
エレンの前に膝をつき、その頬を両手で包む。
「エレン、どうしたの、その顔。誰が、誰がやったの。教えて。代わりに姉さんがそいつに倍に返してやるから」
「姉さんって、別に、アリアの弟はアルミンだろ」
「あなたのこともアルミンと同じくらい大切に思ってる。本当の弟のようにね。もちろんミカサのことも」
アリアのまっすぐな言葉と目線に、エレンは恥ずかしそうに目を泳がせた。
「そんなことより、誰にやられたの? 痛めつけられたって噂で聞いたけど、」
「俺だ」
どこまでも簡潔な声がエレンの隣から聞こえた。
「……え?」
そこでようやくアリアはリヴァイを見た。
足を組んでいた彼はどこか気まずそうにふいっとアリアから目線を逸らす。
「俺がやった」
その言葉の意味を理解して、アリアは後ろに立っているエルヴィンを振り返った。
「本当ですか?」
「あぁ」
「……それが、エレンを調査兵団に入れるための策だったんですか?」
「そうだ。エレンには申し訳ないことをしたと思っている」
エルヴィンの言葉にアリアは息を吐いて俯いた。