第17章 殺したくてたまらないという顔
長い廊下に足音が響いていた。
その足音はひどく急いでいる。ブーツの踵が忙しなく床を打ち、その人の心を表していた。
その人──アリアは急いでいた。
場所はウォール・シーナ内にある審議場。
つい10分ほど前にエレンの処遇を決める審議が終了したのだ。
アリアは特別作戦班の人間ではあるが、だからといってその審議を傍聴することは叶わなかった。
その日は朝からずっとソワソワしていて、審議場の外でずっと終わるのを待っていた。
開始時刻が過ぎ、およそ30分。想像よりもずっと早かったものの、ざわめきが建物の中から溢れ、大勢の人が出てきた。審議が終了したのだ。
傍聴を許された貴族やウォール教の人間ばかりだった。
アリアは人混みを縫って縫って、なんとか審議場の中に入るとほとんど小走りでエルヴィンから教えてもらっていた部屋を目指していた。
人混みはひっきりなしにさっき自分たちが見たものを話していた。
それを聞いているだけで自ずとエレンがどうなったのかはわかる。
エルヴィンの思惑通り、エレンは調査兵団預かりとなったのだろう。
だが、ところどころで不穏な言葉も聞こえてきたりもしていた。
──あの化け物をあそこまで痛めつけるとは
──あれで逆上でもされたらどうするつもりだったのだろう
痛めつける?
その言葉を聞いた瞬間、アリアの心臓は痛いくらい縮み上がった。
いったいエレンの身に何があったのか。
いったい誰がエレンを痛めつけたのか。
ボロボロに傷ついたエレンを見て冷静にいられるか自信がなかった。
だが、大人として、そんな取り乱した姿を見せるわけにはいかない。
近づいてきたドアを視界に捉え、アリアはぎゅっと拳を握りしめた。
一度深呼吸をして、握った拳を振り上げた。