第71章 右手に陽光、左手に新月〜水柱ver.〜 / 🌊・🎴
〜炭治郎エンド〜
七瀬と炭治郎が義勇の継子となり、一週間が経った。二人は互いの荷物の大部分を運び終わると、縁側で会った。
「お疲れさま! どれくらい運べた?」
「俺はあまり物がないから、全部終わったよ」
「良いなあ。私ようやく半分だよ。生活必需品は優先して運んだけどね」
女子は荷物が何かと多くなるんだよ —— 七瀬はそんな事を炭治郎に話しながら彼の横に腰かけた。
六人兄妹中、妹は二人。
女子との暮らしの経験はあるが、裕福とは言えない家庭環境だった為、七瀬の発言にピンと来ない炭治郎だ。
「何が多いんだ?」
「小袖かなあ。非番の日用に着ようと思って、買った物が結構あってね…」
うんうん、と相槌を打ちながら聞く炭治郎は頭の中でそう言えば私服姿の七瀬は見た事がないな、と考えている。
彼は義勇の継子になりたいと相談する随分前から七瀬を異性として意識しているのだ。
「でも実際着たのってほんの数着だから、質屋に売りに行こうかなと思う。箪笥の肥やしにするのも勿体ないしさ」
「それってどれくらいあるんだ?」
炭治郎が聞いてみると、十着はあるとの事だ。
「一人じゃ持てない量だと思うから、俺手伝うよ」
「え? いいの?」
うんと快諾した炭治郎は、七瀬の断捨離の手伝いをする約束を取り付ける。
早速互いの非番の日、もしくは午前中時間が合う日を確認し合うと、急須に淹れた緑茶が空になっている事に気づく。
「あ、空になっちゃったね。私まだ飲みたいから厨(くりや)に行って来る」
「七瀬、俺も…」
「大丈夫、待ってて」
やんわりと制された炭治郎はそれ以上の言葉を引っ込め、素直に縁側で待つ事にした。
小走りで厨に向かう七瀬の姿を目で追いながら、彼は湯呑みに入っている残りの緑茶をズズっと飲み干していく。
「(七瀬と一緒に義勇さんの継子になるなんてなあ。俺は凄く嬉しいけど…)」
彼女は自分の事をどう思っているのだろうか。こんな感情が炭治郎の心の大部分を占めていた。