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恋はどこからやって来る?(短編・中編)

第71章 右手に陽光、左手に新月〜水柱ver.〜 / 🌊・🎴



「(うーん、なかなか覚えられない! どうしたら良いんだろう。序歌は頭に入ったけど、これはかるたを始めるって言う合図だし」

序歌とは、百人一首の札には入っていない和歌だ。

「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今を春べと 咲くやこの花」

王仁(わに)と言う応神天皇の時代に、百済(くだら)より渡来した人物の一首である。

「(花は桜じゃなくて梅なんだよね。咲くやこの花って二回繰り返してるの珍しいかも。どうして同じ言葉を使ったのかな。炭治郎にも聞いてみよう)」

師範にも —— と七瀬の脳内に義勇がポッと思い浮かぶ。

本を閉じ、彼の部屋を訪ねてみようと考えたが、先ほど出かけてしまったのだと気づいた彼女。

「(もう今日はいないんだった。それに聞いても答えてくれるかわからないのに何で師範の顔が思い浮かぶのかな)」




「本当だ、序歌は同じ言葉が二回使われている。七瀬よく気づいたな」

「私、これ凄く好きな歌なんだ。だから真っ先に覚えられたの。読手(どくしゅ)をする時は始まりの合図として一番先に読み上げるから、印象的でね」

自室を出た七瀬は炭治郎の部屋を訪ねていた。
彼もこれから任務があるようで、既に隊服に着替えている。

「咲くやこの花の花って、梅だよな。桜より早く咲くから…このあたりに七瀬が求めてる答えがあるのかも」

うーんと序歌を書き写した用紙を見ながら、首を左右に動かす炭治郎だ。やがて用紙を目の前の文机に置き、両目を閉じて腕を組む。

炭治郎と七瀬の後ろには禰󠄀豆子が入っている背負い箱が置かれており、禰󠄀豆子はどう思う?と七瀬は声をかけてみた。

鬼の禰󠄀豆子は言葉が話せないが、それでも何か反応をしてくれるかもしれない。七瀬は静かに箱を見守る。するとそこからカリカリと爪先で引っ掻く音が聞こえて来た。



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