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恋はどこからやって来る?(短編・中編)

第71章 右手に陽光、左手に新月〜水柱ver.〜 / 🌊・🎴



〜義勇エンド〜

勝負を終えた三人は再び客間に来ており、先程の昼食時と同じ並びで座卓に向き合って座っていた。

卓の中央には七瀬と炭治郎が義勇への手土産として買って来た塩大福が六個程並べられている。

「いただきます」

手を合わせた義勇が声を発すると、ためらいなく甘味に手を伸ばした。

「…」

「…」

「…」

また会話がなく、部屋の中が静まりかえる。水柱は大福を頬張りながら、口元に微かな笑みを浮かべているが、七瀬と炭治郎は正座をしたままだ。

「どうした、食べないのか?」

「え…だってさっき大福はやらないぞって言ってましたよね」

「お前達と食べるのも良いと思い直した」

「…! 義勇さん、ありがとうございます! いただきます」

「いただきます」

炭治郎は笑顔に、七瀬ははにかみながら、塩大福をそれぞれ手に取って口に入れる。

もっちりした生地と甘い餡子に絡む程よい塩気が、三人の心と体をほっとさせていく。

昼食の時と同様に会話は殆どないが、七瀬と炭治郎の心の中はほくほくとしたあたたかな気持ちでいっぱいになった。





それから一週間経ち、二人は義勇の屋敷に本格的に身を移した。

任務の合間に借り長屋から持てる分だけの荷物をまず移し、それぞれの生活に必須の物を揃えていく。

「よし…! これで大体揃ったかな。それにしても広い部屋!」

七瀬は非番の友人隊士や先輩後輩隊士に、食事を奢る事を条件に荷物運びを手伝って貰っていた。

室内をぐるっと見回した彼女は、柱に対しての待遇を羨ましく思う。

「(霞柱の屋敷も炎柱の屋敷も広いとは聞いていたけど、本当だったなー。長屋とは全然違うや。継子でこれだから、水柱…あ、もう師範か。師範の部屋はもっと広いのかな?)」

その時、真新しい文机が目に入り、中央に置かれている和綴じの冊子が目に入る。そこには「百人一首」と記されているようだ。

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