第8章 大切で残酷な暖かい過去
─翌日…
レティシアとジルヴァはユリスの家に居た。
ソファに座っているレティシアを床に座りながらユリスは見上げる
ユリス
「良いか、レティシア。魔法は便利なものじゃない。それから、魔法を保持してる者の想像力によって効果が変わってくる」
レティシア
「想像力…」
ユリス
「嗚呼。魔法を発動するには目的や対象を明確にしなくちゃ駄目だ。例えば…そうだな、そこにあるコップを引き寄せたいとかな」
レティシア
「…分かった」
本当に分かったのか、とユリスは何を考えているのか分からない瞳を見詰める。
ユリス
「レティシア、本当に分かったのか?分からなかったら分からないでちゃんと聞けよ?殴…叩いたりしねぇから」
レティシア
「…うん」
出会った日に叩かれると言っていたのを思い出したユリスは、途中で言い換える。
返事をするもののイマイチ分かっているのか分からず、ユリスはまた問掛ける
ユリス
「本当に分かったのか?」
レティシア
「……」
ユリス
「レティシア?」
レティシア
「………」
目を瞑り人差し指を立てたまま固まったレティシアを見て、訳が分からないユリスは不思議そうに首を傾げる。
もう一度、声を掛けようとしたがそれよりも先に背もたれにかかっていたユリスのモッズコートが浮き上がり、レティシアの隣で眠っているジルヴァの上に被せられた
レティシア
「こういう事…じゃない?」
ユリス
「……そういう事だが…成程、お前は優秀だな」
それはレティシアが理解しているのを証明しようと見せた魔法だった。
ユリスは簡単にそれをやったレティシアを見て、褒めてやろうと頭に手を伸ばしたが、少女は殴られると思ったのか身体を震わせて硬直した
ユリス
「悪い。驚かせちまったな」
ユリスはもっと自分の行動に注意しなければならないと思った