第8章 大切で残酷な暖かい過去
ユリス
「服の外にも痣が広がってたんでパーティーにも出てなかったんでしょう。さっき街を珍しそうに見てたんで」
ステラはレティシアの幼い手を優しく握り、自分が解雇されてからこの小さい身体でどれだけの痛みに耐えてきたのだろうかと想像する事しか出来なかったが…想像するだけで苦しいそれにまた涙が出そうだった
ステラ
「では、本日はありがとうございました」
エドゥアル
「こちらこそ。色々とお話を聞かせてくださってありがとうございました」
ステラ
「お嬢様…お会い出来て良かったです」
レティシア
「うん、私も…」
感情までは無くなってはいないものの、その起伏は限りなく浅い。
ステラは1度、レティシアを抱き締めてから2人にお辞儀をして去って行った
ユリス
「レティシア」
レティシア
「?」
ユリス
「明日からこっそり家を抜けて、俺の家に来い」
レティシア
「良いの…?」
ユリス
「嗚呼。俺がお前に魔法の使い方を教えてやる」
レティシア
「…分かった」
ステラからの話を聞いたユリスの心には僅かではあるが、手を握っている少女を守ってやらなくてはならないと…初めてその感情が動いたのだ。
そんな事、一生無いと思っていたエドゥアルは隣で驚いて目を丸くしていた
ユリス
「は?何でだよ」
エドゥアル
「何でもだよ。…あの子に魔法を教えてやるんだろ?」
ユリス
「そうだけど…お前の仕事が増えるじゃねぇか」
エドゥアル
「知ってるさ。知ってて言ってるんだ」
家に戻るとエドゥアルはレティシアが魔法を習得するまでは、ユリスの仕事を受け持つから少女にちゃんと魔法を教えてやれと言った。
何故そんな事を言うのか理解できないユリスは首を傾げたままだ
エドゥアルは少し見せた幼馴染の変化が嬉しくて、少女と関わればもっとユリスが変わっていくのではないかと思ったのだ。
変われた彼を見て見たくて、そんな提案をした
ユリス
「まじで受け持つのか?」
エドゥアル
「勿論。…あの子にちゃんと魔法を教えてあげるべきだ」
ユリス
「はぁ…分かった」
ユリスはエドゥアルの熱意に押されて最終的には頷いていた