第8章 大切で残酷な暖かい過去
ユリス
「次の説明をしても良いか?」
レティシア
「…うん」
ユリス
「瞬間的に魔法を発動させるには、素早い想像力が必要なんだ」
レティシア
「早く、そうしたい…って想像しなきゃ、いけないの?」
ユリス
「そういう事だ」
ゆっくりとだがちゃんと分からなかったら質問をするレティシアに、ユリスは優しく頷いてやる。
ユリス
「それから、別々の魔法を発動させる事も出来るが…集中力と体力が倍かかるから、基本的に皆1つしか発動させねぇんだ」
レティシア
「ユリスは…出来る?」
ユリス
「まぁな」
レティシア
「…そっか」
ユリス
「もしやりてぇなら、今より体力ついてからな」
レティシア
「…うん」
ユリスは中々、自分の思う様に進まない物事に初めて苦戦というものを味わう。
それは、彼が18年生きてきた中で体験しなかったもの。
ユリス
「魔法で人を蘇らせる事は出来ないからな…って、これは必要ねぇか」
レティシア
「よみが…?」
ユリス
「生き返らせるって事だ」
説明してやるとレティシアは、納得し頷く。
あまり詰め込みすぎても分からなくなるだろうと、ユリスは立ち上がり少女の隣に腰掛ける
ユリスは子供と接した事がルシアン以外にない。
と言ってもルシアンと初めて会ったのは8歳の時だ。レティシアは当時のルシアンよりも幼い。
それに、レティシアは虐待を受けていて感情も読み取れない…ユリスがここまで悩む姿をエドゥアルが見たらきっと茶々を入れていただろう
─コンコン
訪問者を確認するとユリスはすぐに扉を開ける。
ルシアン
「遂に幼い子にまで手を出し始めたのか…?」
つい最近、似た様な言葉をかけられたユリスは大きく溜息を吐いた。
ユリス
「それ…エドゥアルにも言われた」
ルシアン
「日頃の行いのせいだね。…にしても、この子どうしたの?」
ルシアンは自分を見上げている濁った紫の瞳を持つ少女を見ながらユリスに問う。
そして、説明された全てに11歳のルシアンは、6個下の少女が置かれてきた環境に息が詰まりそうになる。