第8章 大切で残酷な暖かい過去
外へ出るとレティシアは賑わう街をきょろきょろと首が取れそうなくらい動かす。
ユリス
「おら、ちゃんと前を見ろ。…外見た事ないのか」
レティシア
「……ずっと屋敷のお庭にしか、出てなかったから」
当たり前の様に告げられた言葉にユリスとエドゥアルは、互いに目を合わせた。
エドゥアル
「賑やかでしょ?」
レティシア
「……うん」
無表情だった少女に僅か喜びの様なものが見えた気がした2人は無意識のうちに安堵の息を零していた
─ガサッ
ユリスとレティシアが手を繋ぎ、レティシアの隣を歩くエドゥアルの肩に乗っているジルヴァの前で女性が持っていた紙袋を落とし、それを見たエドゥアルは紙袋を拾おうと近付くが女性の視線はレティシアで固定されていて
「お嬢…様…?」
懐かしい声にレティシアは、紙袋から視線を女性に向ける。
そこには…
レティシア
「…ステラ」
暴力を振るわれていた少女を守ってくれた、元メイドのステラだった。
三つ編みだった髪は下ろされていたもののそばかすと優しい雰囲気は変わっていなかった
ユリス
「知り合いか?」
レティシア
「…私と、一緒に…居てくれた人」
ユリス
「つまり知り合いというわけだな」
ステラは状況が理解できなかった。
少女が街中に居る事、知らない男性2人と一緒に居る事、知らない魔獣と居る事
ステラ
「あ、あの…お2人は…?」
ユリス
「公園のブランコにいたんで、保護したんですよお嬢さん」
エドゥアル
「…気味の悪い笑みを貼り付けやがって。…僕はエドゥアルで、こっちはユリスです。貴女は?」
ステラ
「あ、私はフォンテーヌ家でメイドをしておりました…ステラと申します」
互いに名乗り終えると2人はステラから色々聞こうと近くのカフェに入る事にした。