第8章 大切で残酷な暖かい過去
レティシア
「ジル…何か、大きくなった…?」
ジルヴァ
「……?」
レティシアが首を傾げるとジルヴァも真似をするように首を傾げた。
この日、ジルヴァの傍でレティシアは5歳を迎た。
出会った頃よりも少し身体が大きくなったように感じてそう呟いたものの、答えが出る訳もなく。
それから数日…。
レティシアはバレない様ジルヴァを部屋に置いて庭で空を見上げていた
クラリス
「姉様…!」
レティシア
「…クラリス」
声を掛けられ顔を下げると、そこにはクラリスの姿があり少女は嬉しそうに姉の手を取る。
クラリスの胸元にはあの日、レティシアが奪い取られたネックレスが輝いていた
クラリス
「姉様、…お誕生日おめでとう…!」
レティシア
「ありがとう、クラ─「こら、駄目じゃない!」
会えない妹からの祝福の言葉にレティシアがお礼を述べている最中、母が怒鳴るように遮る
母
「あの子と喋るんじゃありません!」
クラリス
「でも、母様…姉様、誕生日だった…のよ?」
母
「そんなもの、めでたくも何でも無いでしょう。めでたいのは貴女の誕生日だけよ」
クラリス
「母様…そ─「良いよ…クラリス。…またね」
酷い事を言う母にクラリスが言い返そうとした瞬間、レティシアはそれを止める。
クラリス
「姉様…」
母
「ほら、いらっしゃい」
手を掴まれたクラリスは名残惜しそうに振り向きながら室内へと戻った
レティシア
「ぁ…、っ……ぅ゙…っ…!」
母
「どうしてそこまでクラリスに関わろうとするのよ!」
高価な指輪が彩る綺麗な手でレティシアの金の髪を掴みながら、目をつり上げて怒鳴る母の暴力に今日もただ少女は耐える
片目は腫れ上がり唇の端からは血が流れる姿は誰が見たって痛々しい
レティシア
「う、ぁ…っ……い゙…っ…!」
母
「魔法が使えるのに置いてあげてるだけ、有難いと思いなさいよ!?」
レティシア
「ぅ、ぐ……っ」
髪から手を離し治る前に広げ、増やされる痣の上から更に手を振り下ろす。
暫くして満足した母は部屋を出て行く
レティシアは朦朧とする頭で出て行く事を決意しジルヴァを抱き締めて夜の街をふらふらと歩く。
見付けた公園のブランコに力なく座る