第8章 大切で残酷な暖かい過去
レティシア
「ほら…お帰り」
「……?」
ぽんっとお尻を押されても小型魔獣は理解が出来ないのか、可愛く首を傾げる
レティシア
「君の怪我、治ったから…」
どれだけレティシアが押しても小型魔獣は離れる気が無い様で、何度もレティシアの脚に擦り寄る
レティシア
「どうしよう…」
擦り寄ってからレティシアを見上げる瞳は何かをお願いしている様に感じた少女は、じっと小型魔獣を見詰める
レティシア
「静かに…出来る?」
「にゃう…!」
レティシア
「約束だよ…」
小型魔獣はレティシアの言葉を理解したかのようにその場で小さく跳ねる。
それからまたレティシアはじっと小型魔獣を見詰め
レティシア
「ジルヴァ…」
「ウゥ…?」
レティシア
「君の名前…ジルヴァ」
それに反応する様にジルヴァと名付けられた虎の様な魔獣は、パタパタと小さい羽で飛び上がって喜ぶ
ジルヴァはこの時からレティシアと共に生活を続けている、彼女の大事な友達だ─
以前は何があってもパーティーに連れて行っていたのに今では体調不良だとか、色々と言い訳をしてレティシアを社交界へ連れて行く事はなくなった。
それは同時に、少女に刻まれる痣や傷の量が増えたと言う意味で
レティシア
「…終わった…」
痛みと罵倒が続く八つ当たりの暴力が終わりレティシアは力なく倒れたまま呟く。
飛び上がってレティシアの近くに来たジルヴァは心配そうにレティシアに寄り添う
ジルヴァは暴力を振るわれるレティシアを何度も助けようとするが、その度に来ては駄目と教えられたそれを守って大人しくしている。
そして、静かになるとすぐに出て来てレティシアに寄り添うようになった
レティシア
「…っ…は、ジル…私嫌われてるんだ」
ジルヴァ
「にゃう?」
レティシア
「…君が喋れたら…良かったのにね」
ジルヴァ
「ウゥ?」
レティシア
「いや、喋れなく…ても何となく、分かるね…。君みたいな…友達がいて良かった」
力なく言葉を吐き出すレティシアが、寄り添うジルヴァの頭を優しく撫でると彼は嬉しそうに目を瞑った