第8章 大切で残酷な暖かい過去
4歳になっても当然、少女の誕生を祝う日はなかった。
レティシア
「……っ、ぅ…は、っ……ぁ…!」
母
「あー…もぉ!」
レティシアへの暴力は日に日にエスカレートしていき、母の気に入らない事が少しでもあるとレティシアの白い身体に痣が増えていった。
勿論パーティーには参加させなくてはならない為、ワンピースに隠れる部分にしか痣は刻まれない
ステラがいた頃にあったレティシアの笑顔は無くなり人形のようだった。
その2日後、レティシアは痛む身体を引き摺って庭に出て空を見上げる
レティシア
「………」
ぼーっと濁った瞳は空を自由に飛ぶ鳥を眺めていた
─カサカサッ
レティシア
「……?」
庭にある木の近くで葉の音が耳に届くと、レティシアは小さく首を傾げながら音の正体を知ろうと歩を進める。
がさっと葉を掻き分けるとそこには…
レティシア
「虎…?」
白く小さな虎が倒れていた。
だが良く見ると額からは小さな角、背中からは小さな羽が生えていてその存在が絵本で見ていた魔獣であるのだと、レティシアは理解する。
レティシア
「怪我してる…」
怪我の痛さが良く分かるレティシアは抑揚のない声で呟くと、小さく唸っている小型魔獣を優しく抱き上げこっそり自分の部屋へと連れ帰った
小型魔獣を隠す様に箱へ入れると右前脚に優しく包帯を巻き、じっと呼吸している姿を眺めていたが、気が付けば毛に覆われた身体を撫でていた
レティシア
「君も1人…?だとしたら、私と一緒…」
怪我が治るまで、誰にもバレずに小型魔獣を自分の部屋に置く事をレティシアは決めた。
それから数日、怪我の治りが早い魔獣は元気に立ち上がっていた
その姿にレティシアは安心するのと同時に、それが別れであるため悲しくなった。
だが、この小型魔獣に家族がいたら…そう考えればこっそり庭へ出て出会った場所に小型魔獣を置いてやる