第8章 大切で残酷な暖かい過去
ステラ
「私がクラリスお嬢様を誘ったのです。レティシアお嬢様は悪くありません!殴るのであれば私をお殴りください!」
母
「何ですって…?」
母に背を向けてレティシアを抱き締めながらも、顔だけは母へ向けて強く言い放つステラの姿と言葉に母は更に目をつり上げ
母
「レティシア…貴女は本当に嫌な子ね。メイドに魔法をかけて自分の味方にするだなんて」
ステラ
「奥様、私は…」
母
「お黙りなさい!」
ステラ
「……っ」
違うと返そうとしたステラの言葉を母は叩き落とす
レティシア
「ご、めん…なさい…、クラリス…呼んだ…の、わたし…」
ステラ
「お嬢様…」
母
「貴女には相応の処分を与えますからね」
ステラ
「……はい」
魔法にかかったメイドは用無し、母の処分の意味はそういう事だ。
だが、ステラは解雇される事よりもレティシアの言葉の方が痛かった
ステラ
「すみません、お嬢様…私が部屋を空けてしまったせいで」
レティシア
「ステラ…いつも、優しい…助けてくれて、ありがとう」
母が去った部屋でステラはレティシアの手当をしながら謝る。
自分が部屋に居なかったせいで暴力を振るわれてしまったのだと後悔するステラに、レティシアがお礼を述べるので彼女の胸は張り裂けそうだった
下唇は強く噛みすぎて切れており、とても痛々しく…ステラは抱き締めずにいられなかった
絵本を読んで少女が眠るまでずっと寄り添い続けた
その翌日からレティシアの部屋に三つ編みとそばかすが印象的な優しいメイドのステラは訪れなくなった。
それは、レティシアにとって味方がいなくなった地獄での暮らしの始まりだった