第8章 大切で残酷な暖かい過去
母
「もぉ!何で貴女はそうなの!みっともないじゃないっ」
レティシア
「ご、ごめんなさい…っ」
母
「─…っ、泣くんじゃないわよ!」
レティシア
「あっ…!」
ビュッフェ形式のパーティー中におかわりをしたのが、どうやら母の逆鱗に触れたようで屋敷に戻った途端、注意をされた。
目をつり上げ声を荒らげる母の姿は、幼い少女には優しかった頃と別人に思えて恐怖しか無く、堪えていた涙が頬を伝うと母はその日初めて大切に育てていた娘に手をあげた
母
「これも返してちょうだい!貴女はフォンテーヌ家の汚点よ…!」
レティシアの首に掛かっていたネックレスを母は奪い取り、去り際にそんな言葉を吐いていった。
頬を張られた衝撃で廊下に倒れ込んだレティシアは、ジンジンと痛む頬を擦りながら上体を起こす。
レティシアはショックだった。
あんなに優しく暖かかった実の母に怒鳴られ手をあげられた事が
メイド
「お嬢様…!」
シーツを替えようと廊下を歩いていた三つ編みをしたメイドが、廊下に座り込んでいるレティシアを見付けパタパタと走ってきた
メイド
「頬が腫れて…どうされたんですか?」
レティシア
「…なんでもない」
涙を流しながら、ふるふると首を横に振る少女を見て三つ編みのメイドは心が締め付けられた。
その後、彼女はレティシアの赤く腫れた頬を優しく冷やし眠るまで傍に居た
それからレティシアの身の回りの事は全て三つ編みのメイド、ステラが受け持つ事になり他の使用人は安堵したのだ
ステラ
「お上手ですね、お嬢様」
レティシア
「これ…」
ステラ
「もしかして私ですか?」
レティシア
「そう」
ステラ
「嬉しいです。ありがとうございます、お嬢様」
あの日泣いていたレティシアは優しいステラにすっかり懐き白い紙いっぱいに三つ編みとそばかすが印象的な彼女の姿を描き、プレゼントするとステラは嬉しそうにその絵を眺めた