第8章 大切で残酷な暖かい過去
3歳になって間も無くレティシアに異変が起きた。
─パリンッ
父
「何だ…!?」
母
「レティシア…今のは何…?」
レティシア
「ぇ…わから、ない…」
少女は自身の右手を見下ろしながら動揺が隠せなかった。
それは両親も同じで…。
レティシアが右手を振った瞬間、棚の上に置いてあった花瓶が割れてしまったのだ
クラリス
「だいじょぶ?」
その時、母の隣に座っていた妹のクラリスが椅子から降りて手を眺めているレティシアの、その手を両手で握り眉を下げて姉を見上げる
レティシア
「だい、じょうぶ…」
母
「クラリス…っ」
姉を心配していたクラリスの腕を母は慌てて掴み抱き寄せる。
突然の事にレティシアもクラリスも目を丸くして戸惑う
レティシア
「……っ…?」
クラリスを抱き寄せた母の目は今までレティシアに向けられていた優しいものではなく、嫌悪を剥き出しにした幼い子供に向けるようなものでは無い。
両親はこの時、レティシアが魔法使いである事を知り
それをきっかけに2人の愛情は妹のクラリスにのみ注がれた
魔法が発動してしまったレティシアは両親に育児を放棄され、フォンテーヌ家の使用人が面倒を見る事になった。
フォンテーヌという名前もあり、両親は家の者全員にレティシアが魔法使いなのを秘密にする様、口を封じた
メイド
「お、お嬢様…お食事の時間です」
レティシア
「あの…」
メイド
「ひっ…は、はい…」
レティシア
「なんでもない…」
指示された為、面倒を見る事にした使用人達だったがまだ魔法の制御が出来る歳では無いであろうレティシアの世話に怯えていた。
少女1人に大人が怯える姿は、幼い彼女から見ても異様でレティシアは話し掛けるのをやめた
いくら隔離していたとしてもパーティーがあれば隠しておく訳にもいかず仕方無く両親は、レティシアも参加させていた