第15章 予感と奇跡
ノータイムで千空を潰しに来る氷月に千空が叫ぶ。
「俺は!科学で指先一つ触りゃ氷月テメーをぶち殺せる!!」
氷月は脳の溶けたハッタリーーと流すが。
ああ、成程ね。その背後でニヤリ、と笑う軍師が居た。氷月からすれば、さっきの火炎が瞬時に起こった理由も分からないだろう。私も千空君にクロム君が脱獄する前に、電池の使用用途とかケータイの話やら科学の話を聞いてなかったら分からなかった。
「脳が溶けてるのは君の方ね!!」
ガンッ!!!!葵が跳躍した後、全体重をかけて管槍を押し込む。
その隙を突いて、氷月に司が怒涛の連撃を食らわせる。氷月が司の相手をしようと、葵をグイと押しやる。
その力に任せて、葵は千空の方角へと自ら飛んだ。
「………ウ…ッ!!」決死の表情とセリフ。大袈裟に声を出して地面に転がった。敢えて空中で手放した管槍が、コロコロ…と明後日の方角へと転がって行くのを見届ける。
必死に管槍で防ぐ氷月。……こちらにいる千空は負傷。葵は管槍を飛ばしたので暫くは無力化出来たと思ってるだろう。
ニヤリと笑いつつ、行こう、と千空の耳元で囁いてズルりズルり、と気付かれない様に引き摺る。
……男性は流石に女である身には重いが、今のヘロヘロの状態の千空が自力で這うよりはまだ速い。
千空が口パクで「ああ さすがだな」と伝えてニッと笑う。
しばらく引き摺った後に背後を見れば、司が地面に下敷きになっている。手には氷月の管槍を握り締めていた。ーー今にも首に刺さりそうだ。
先程までは戦闘で気を引き付けていたが、これでは千空を引き摺る音で気付かれる。それで本格的に千空の方を潰しに来れば、『作戦』は終わりだ。
「行ける?」葵が小声で問いかけると、千空がああ、と頷く。葵は千空の身体を地面に置いて、素早く自身の管槍を取りに行った。
「ならば何故もがくのですか。君の死だけはとうに確定しているのに」
「さあ…分からないな。ただ、もしかすると…
少しでも長く闘っていたい…。そう思うほど、楽しかったのかもしれない…」ふ、と司が笑う。
最後の今、この束の間の共闘がーー
「そうですか、それはとても残念ですね。
楽しい時間もそろそろおわ「はーい、延長入りました!ごめんね氷月!!」
葵の攻撃が腕にガンッ!!!と当たる。