第15章 予感と奇跡
しかもご丁寧にベストポジションに隠れてやがる…隠密力もあんのか。マジでチート野郎だなあ、おい。
にしても、他人に大丈夫だっつってんのか?自分も落ちてんのに…まあお丈夫そうで何よりだわ。
そんな事を思いつつ、お陰で氷月の発言に対して冷静になれた。ありがとよ、と千空が内心で礼を言う。
その間にも氷月の話は続く。
「納得して動くか、それとも拷問で動くか。それだけの差なんですから」
そう言うと、氷月はつらつらと己の理想論を話す。
「この世界に、優れた人間だけを生かすべきです……!!!!」
そう叫ぶ氷月の狂気に満ちた顔を見ながら、千空は冷静に考える。
確かに、葵の報告と忠告通りだ。もう少しその話を重要視する必要があったのだろう。
だがまあ、今はそんな話を考えてるヒマも無い。
……こちらで武器を持ってるのは葵だけだ。
いざという時に出てくるだろう。葵が『科学の武器』を持ってこい、と指示したお陰でそれなりに準備もしている。
それに。
千空の足に、司の大きな握り拳が当たった。
《大丈夫だよ》
そう、司の声が聴こえてくるようだった。
最後の悪足掻きに見せて、石化した燕を投げつける。その隙に、司が一撃を食らわせた。
「……今度こそ!もう二度と危険ってやつは訪れない!!これからはこの俺が戦うからだ………!!」
ーーーそして、もう1人。
「アガッッ…!!」
司の攻撃で手元が疎かになった氷月の管槍を弾き飛ばす人影。
「……司君の言う通り。私に後を尾けられてたのも、隠れて隙を窺われてた事も、それぐらい気付きなよ……氷月。ちゃんとしようね」
「……葵……ッ!!!」
管槍を弾いた人物の名を、氷月が叫んだ。
「纏めて潰せばいいだけです。所詮手負いの虎に戦闘能力すらない男など、人類最弱のタッグです。
ーー武芸を齧った程度の葵クンなど、数の内にも入りませんよ」
氷月が管槍を手に取る。
が、背後を葵が常に取るように動く。
「この新世界で双頭だった司クンが死に体の今ーーー霊長類最強の男はこの私です」
「あれー、それだと霊長類最強の女が居ないね、氷月!私がその座に座ろうかなあ!!」
カンカンッ!!
葵が千空と司の作戦会議を援護する様に、大声で叫びながら時間を稼ぐ。