第14章 おかえり、未来
「ええっ」「アンタ、惚れた奴にはきっちり本音話すし大事にすんだね!!見直したよ!!!」ニッキーにバシィイン!!と背中を叩かれる。痛い。
「そうだぞ!!凄くいい事だーーー!!」
「あーーうるせえぞ、デカブツ…」
「えーと皆さんお婿さん困っちゃってるのでその辺で~」元ののんびり口調で葵が言う。
「せっかくなんで、私が病院着くまで歌でも歌いますね~」葵が提案する。
おおおおお!!と歓声が上がる。
「ほーん?で、曲名は?何にすんだよ?テキトーか?」千空が試す様な眼差しで葵を見る。
「ふふふ、そんなの、決まってるじゃないですか~。
リリアン・ワインバーグで『One Small Step』!!!」
ワーッッ!!とナイスな流れを読んだ選曲でその場の空気をかっさらい、飲み込む。先程彼女自身が引用した、リリアンの曲。
それまで粛々と歩いていた行軍が、まるで希望へ足を踏み出して行く為の物にすら思える。
……本当に、彼女には敵わないな。僕が大変だと思ったら、絶対に助けに来る。場の雰囲気だって飲み込むし……
ーー何より、とても……綺麗だ。
歌い続けながら歩く葵を横目で見ながら、羽京は笑った。
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「この辺りかな、病院があったのは」
そう指さす司。先には、かなり流されて埋もれまくっている人達。
ダイナマイトで発掘作業を進める。
「あのー、ところでさ」羽京は横でせっせと掘りまくる葵に声をかける。
「??なんれすか」「…何でまたクッキー食べてるのかなあ~~??作業中だよね?」
ごへんなはいーー!!と謝罪する葵。
そのやり取りを見た周囲に笑われてるが……既にバカップル認定されてるので、もういいや、と羽京は諦めた。