第14章 おかえり、未来
ーー3700年間聞けなかった言葉を、今、やっと聞けた。
取引内容はシンプルだった。復活液と、停戦。
「その与太話を、信じるに値する根拠は」
多分、あるんだろうとは思った。何かしら症例を並べてーー
「……俺の、言葉だけだ。科学に嘘はつかねえ。
……足りねえか」
嫌という程、知っている。科学の為なら一度自身に殺された。嘘をつかなかった姿を。
ーー信じよう。そして、この取引が成立した時には、彼とーー
千空と、友達になれるだろうか。
「…いや、十分だ……十分だよ」
孤独な王ーー獅子王司は、そう答えた。
******
獅子王未来が入院していた病院の辺りまで、司の案内で行軍していた。戦車を操縦するゲン中心に、先頭を司がきって歩く。
静かな行軍だったが、ふとニッキーが零した一言で、会話が始まる。
「…アンタ、妹が居たんだね」
その流れで、石像破壊についても言及される司。
…聞いてみよう。多分、今が聞くチャンスだ。
羽京はずっと疑問だった問いを司に投げかけた。
「…どうして、人類の浄化なんて恐ろしい事を…」
「…恐ろしい……うん、そうかもしれない」
司が羽京の問いに真剣に返す。
『もし、自分がまだ人の殆ど居ないストーンワールドで目覚めて、復活液の存在を知ったら、どうするか』
司から逆に投げかけられた問いは重い。
「原始の世界で大人数は支えられない、復活液を永遠に作り出せる保証も無い。
……羽京。君なら、誰を選ぶ?」
「…………」
羽京は答えられなかった。いや、正確には答える資格が自分には無いと思った。
「命を選ばなくちゃいけない…神を演じる、罪深い仕事だよ。ならその罪は俺が負う。新しい世界を作るチャンスにするーー
そう、思った。目指すモノは変わらないよ、
今も、これからも。」
誰もが沈黙した。命を、選ぶ。それは誰かを見捨てる、という事でもあった。
羽京は思う。そんな問いかけ、答えられないだろう。ある意味、選ばなかった人を見殺しにする所業だ。
戦車を挟み反対側で歩く千空を見た。あの千空ですら、沈黙を貫いている。それ程までに難しい事だ。
…僕にはとても、無理だ。神を演じるだなんて。
人を選ぶなんて、とてもーー
まさかこの難題に答える人なんて誰も居ないーー
「司君~それ、1人で背負う場面では無いですな」