第13章 積み重ねた物
「ハ!葵、貴様の戦術はめっぽう勉強になるな!!」
ーー上空からコハクが管槍に向けて全体重を乗せた。バギィ、と折れた葵の管槍だが、葵はすかさずコハクの離した元氷月の槍を蹴り飛ばす。
ーー拾うまではいかないが、これなら足を伸ばせば何とか届く。
「!!」
すかさずコハクが折れた元葵の管槍の
氷月の持っている側の柄を頼りにしてグン、と一度腕で手網の様に手繰り寄せると、氷月の手を起点に一度跳躍。
更に、今度は氷月の肩を土台にして跳ねてーー
ーー再び氷月の物だった管槍がコハクの手に戻る。
「ハ!めっぽう戦いやすくて助かるな!」
「同感だね!私の考えてる戦術がここまで通じるとは、実にやりやすいよ!」
二人の女戦士が、氷月の前に立ち塞がった。
「…こちらは実に不快ですがね」
冷えた声で、氷月が呟いた。
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ーー女戦士二人の闘う音を聴き届けつつ、羽京は科学チームの元へと向かう。
そこには黄色い液体を囲む科学チームの三人ーー
千空、クロム、ゲンが居た。
「あはは、それは何かな?」
「羽京!んーとだな…」クロムが首を捻る。
「それが俺らも分かんないんだよね~。なんか甘い匂いするし…」
「なんか頭痛くなるねコレ…?」羽京もその輪に加わる。
どうやら戦況を一転させる科学の武器が出来た様だがーー
「シッ!!息吹きかけんな、ポタッとやっただけでドカーンだ、全員肉片も残んねぇぞ」
「「「え…」」」
ゲン達三人が固まる。
「ニトログリセリンだ」千空が静かに言う。
「えーっと…それは…」羽京は冷や汗をかいた。
「ニト…ロ…!なんか聞いたことあるよそれ…バイヤーなやつ!」ゲンはひぃー!と震えている。
対して千空は冷静に調合作業をしている。
「コイツだけはマジでシャレになんねえからな、良い子は死んでもマネすんじゃねえぞ」
誰もしねえよ…とクロムが冷静に突っ込んだ。
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「うぉおおおおお!!行かせーーん!!千空の元にだけはーー
大樹が司が奇跡の洞窟に行かない様に迫るが、一方の司は上空を見上げていた。
「……?」
合わせて上空を見ると、そこには。白い紙ヒコーキが、ゆらゆらと不安定に飛んでいる。
ーー明らかに、場違いな物体の存在に、司は動きを止めていたのだ。