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僕と彼女の共同戦線

第13章 積み重ねた物


後ろの兵士がスペアを持ってくるが、キィイイインと柄に矢が刺さる。兵士が驚いた瞬間に、葵の槍がスペアの槍を手から矢が飛んできた方向へと吹っ飛ばした。

「羽京君!!」葵のその叫びで、羽京が瞬時に飛んだスペアの管槍を森林の中を颯爽と移動して回収する。

「無駄な足掻きですね。絶望した凡夫はこれだから。スペア位、幾らでもあげますよ」
「ハ!分からないのか?全ては積み重ねだ。武力も、科学も。」

スッ、と葵が氷月の背中に槍を構えた。
「…そうだね。別に一人の天才は関係ないよ」

ーーそう、かつて管槍で天才と呼ばれた少女が言った。


「君がそれを言いますか…」チラリと横目で氷月が言う。

ーーかつて、彼女と比べられて、落ちこぼれと呼ばれた少年。



「…個々の力が小さくてもいいんだ。その皆の僅かでも確かな積み重ねがーー全てを作るんだよ。」

きっと自分より長く尾張貫流槍術に向き合い、努力を積み重ねただろう背中を。かつての仲間の背中を葵が切なげに見上げた。

「ああ、そうだな。
私達は科学をーー千空を、信じているのだ」

静まり返った場に、葵の指示が飛ぶ。

「羽京君!科学チームの様子見てきて」「あはは。それは軍師命令かな?」羽京が笑う。
「勿論!」「分かったよ」羽京が手元のスペアの管槍を不要である、と判断。
バギィ、と膝に叩き付ける様にして柄を折る形で破壊してからその場を去る。

「……フン」氷月はコハクが握り締めた手元の管槍を離すと背後にあったもうひとつの管槍ーー
葵の槍を掴んだ。そのままグイッ、と引っ張ると、流石に腕力差で葵が引き摺られる形になる。


……渡すもんか。私の管槍を。希望を。
みんなの未来の為に。管槍を持つ手をギュッと握る。
思い出せ。私は、一人じゃない…!!



「…そう来ると思ったんだよね~!」「!!」
葵はズシャアッと己の持ち手部分を槍先の付いてない反対側へ持つ力はそのままにスライドさせる。同時に正面の氷月より左側に移動する。

管槍の両端を氷月と葵が持つ形になりーー
ぐん、と管槍本体が思いっきりカーブを描いた。


氷月のパワーと葵の機転、そしてーー
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