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僕と彼女の共同戦線

第11章 カウントダウン


もしかしたら、最後になるかもしれない言葉を、積み重ねた。
司を見上げた反動で、首筋に微かに刃がくい込む。
つ……と首筋に血が流れた。

「…………氷月」
「はい」
「悪いが…」そう言って、司が管槍を掴む。
意図を理解した氷月が、手を離す。

「…………」刑の執行を、曇りなき眼で葵は見ていた。

司が管槍を手にする。自ら殺そうというのか。
千空を殺した事もあるくらいだ、その可能性はある。管槍を手にすると、司は短めに構えてーー

ザシュッ

…………………


「………………え」

ーー葵の、手首を縛る縄に軽く刺した。
そのまま、ザシュ、ズシュッとゆっくり縄を切る。

自由になった両手を、軽く握ったり広げたりしていた。

「…………殺した方が、危険性は無いけど」
そう砕けた口調で、座り込んだまま司を見上げて呟いた。

「殺しはしないよ。この手ではね。
君に命令を下すよ。この国からーー居なくなってくれ」

「……なるほど、追放刑ね」
そう言うと、葵はスッ、と立ち上がる。

首元を見ると、血の跡がついていた。
「ふーん、首斬られたらこうなるのか…」
「……君は、まさか自分の人生を楽曲作りの為にあるとでも思っているのかな」

「そこは否定出来ないかも。曲が出来る為なら……割と何でも、悲劇だって受け入れて来たよ」
「…………そうか。それが君なりのーー『Aonn』としての生き方なんだね」

「『Aonn』としてはそうだね。……ところで、死刑にしなかった訳は?」
「単純だよ。形は追放刑だけど、君は『科学王国に寝返った』事にすればいい。君自らが出ていくのならーー」

「確かに、その方が穏便だね。生命までは取らないから、ファンがまだ荒れない。ーー私が科学王国に辿りつける保証は無いから、実質は死刑だけど」
ニコッと笑ってみせる。


「ーーそれでいいよ。みんなの前で何か演じようか?その方が話が早いし、みんな納得するでしょう?」

「……羽京は、いいのかい」
少し声のトーンを落として、司が尋ねる。
「……良くはないかな。けど、目の前で死ぬよりはマシでしょ。……彼には、出来ればーー何も言わないでね。私が去ることも。さっきの質問の答えも」
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