第11章 カウントダウン
今。私が。ここで、足止めをするしかない。
そう覚悟を決めて、葵は瞼を閉じた。ふーっと息を吐いて落ち着いた顔で、司を見上げる。
そして静かに、爆弾発言を投下した。
「…陽君は生きてる。
クロム君を脱獄させたのはーー私だよ」
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同時刻、奇跡の洞窟前。
科学王国の全ての戦力が、そこには配置されていた。戦車、戦闘員、そしてゲンが頑張って寝返らせた兵たち。
「奇襲キメても敵が衝動的にパニクってくれんのは、最初の20秒だけだ!!それを過ぎたら敵も冷静になってーー斬り合えば死人が必ず出る!!」
戦車の中で千空が宣言する。
「皆!腹を括れ!!この20秒で、人類の命運が決まるのだーー……!!」
コハクの一声と共に、大砲が打ち込まれた。
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「……うん。やっぱり君が逃がしたんだね、葵。
でも疑問だな。何故今ここに来て白状したんだい?」
今、葵は墓の前に回り込み、司の前に跪く形になっていた。……これで墓周辺の異変は見えづらい。
「そろそろ私のせいで帝国内部が荒れてるでしょう?」
正直こういう心理戦は専門家では無いのでゲンに変わって貰いたいがーー
得手で無いからと逃げている暇も余裕も無いのだ。
事前に千空と練った奇襲自体は20秒で終わる。だから、自分は少しだけ持たせればいい。
「うん。確かに荒れてるよ。君を監視に移行する意見もあったがーー
今の発言を聞く限り、君をその処遇にする訳にも行かないね。ーー氷月」
「ーーええ」
ス……と氷月の背中の管槍が抜かれる。
首元のギリギリの所に槍先が迫っている。