第10章 優しい理想家
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「ククク、羽京。ーー天才軍師サマの葵が大丈夫、って太鼓判押すだけあったな」
「「「え」」」
集会メンバー解散後。その場に残っていた羽京に、千空が暴露する。
「あの子は慎重にって言ってたけど…」戸惑うニッキーに千空がそういや言ってたなー、んな事。と平然と返す。
「あんときゃまだケータイ作戦が本格的に始動してなかった頃だからな。
頭キレッキレの軍師様が気を回して、俺らの緊張感抜かないように要注意人物二人をいっぺんに剥がさなかったんだよ」
「あーなるほどね~。味方ですら欺くの、ゴイスー…!!」お陰でこっちはヒヤヒヤしちゃった、とゲンが苦笑する。
「わあお…!葵ちゃん、そこまで考えてたんだね…!!」杠も流石に驚きが止まらない。
「んで?肝心の軍師様が囚われの姫君になったこのタイミングでご都合よ~~く現れたんだ、どうせご指示でも受けたんだろ?」千空が指摘する。
「あはは…どうやらお見通しみたいだね。そうだよ、動けない彼女の代わりに僕が味方として交代で動くってだけ」羽京が苦笑しつつ答えた。
「だろうな。んで?そのお姫様が嫁なんだろ?」
ちょーっと千空ちゃん!プライベート!プライベートの範囲そこ!!とゲンが指摘する。
「…うん。だから君たちには勝ってもらわないと困るな。あの子は勝つ為にびっくりするぐらい無茶してきたから」
「あーー氷月の時も死にそうな状況で取引した、つってたな」
「「「「氷月(ちゃん)と!?!?」」」
一同がハモった。
「ええ~~!!何それ怖い~…ジーマーで」
「僕は丁度彼女が科学王国スパイ容疑がかかってた頃の監視役をしてて、やり取りしてるのを見たけど…」そこで言葉に詰まる。
「…氷月が滝の付近に連れてって、突き落とせる場所を指定するし」
「あーやりそうね、氷月ちゃんなら。」ゲンが想像して渋い顔をする。
「葵は葵で、敢えて挑発する様に
思いっきり自分から滝に落ちるギリギリの所狙って座るし、そのまま交渉するから見てる方の胃が……」
「あーー……うん。知ってたけど……葵ちゃん、武力こそないけどそれ以外で普通に氷月ちゃんや司ちゃんと渡り合えてるよね…。主に精神的な面で…。ゴイスー…」ゲンはもはや想定内の動きをする人間じゃない、と悟った。