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僕と彼女の共同戦線

第8章 繋ぐバトン


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「…………!?」

クロムは昨晩に引き続き、動揺していた。
また、夜間の差し入れである。しかも今度は……

「これ……まさか、塩か?しかもこんなに…!?」
しかも水の入った水筒まである。
有難い。正直監視の静かな今のうちに今すぐ抜け出したいがーー

夜間で行動しづらい。罠を踏まない様に動くのも一苦労だ。
やるなら、朝日が登ってからだ。

「……ありがとよ」小声でクロムが呟く。

謎の歌姫、葵。やはり、千空と同じ様に科学に詳しいのだろうか。分からないがーー自分に協力してくれている事だけは、分かった。

ーー背後で、もう一人暗躍している人物の存在は知らなかったが。

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朝日が登ってきた。チュンチュンという鳥のさえずりと共に、クロムは起き上がる。

ーー傍には最初に葵が差し入れとして持ってきた脱獄アイテム、竹筒。

中に入ってる液体に、静かに懐に隠した電池からプラスとマイナスの導線を伸ばす。

シュワァアア……という分解の音に、これで成功した、という確信を持つ。

生成されたのはクロムの狙った『水酸化ナトリウム』では無く、『次亜塩素酸ナトリウム』
ーー所謂漂白剤だ。

それらを縄にかけて原料のセルロースを分解ーー

ガラガラガラァッッ!!!!

「おぅ、どうだ…!これが科学の脱獄だぜ!!」
クロムは高らかに勝利を叫ぶ。

既に破壊された罠の中へ、棒高跳びの要領で牢屋に使われた竹の棒を刺して移動する。敵の罠を利用して、迂闊には動けない監視員の目を潜り、陽を『肺炎』の嘘で騙しーー

遂に、千空達の本陣へ辿り着いた。

「いったいどうやって竹の牢を破ったのだ?」
コハクの問いかけに、おぅ聞いてくれ!ヤベーのが居るんだ、司帝国によ!!とクロムが叫ぶ。

「葵つってな、千空と同じ自力で復活した
「「「「「知ってる」」」」
科学王国の一同がハモった。

「知ってんのかよ!!」ズコーと盛大に転けるクロム。
「なんでみんなアイツの事知ってんだ?」

「ククク、知ってるも何も、葵は俺らの電話作戦で味方になる前から司帝国ぶっ壊そうとしてた策士だぜ」
「……!?そうなのか!?とてもそんな風には見えなかったぞ!?」
なんかルリみてえな雰囲気だったし…と呟くクロムに、ルリが私ですか?と首を傾げる。
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