第8章 繋ぐバトン
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「…ゲン君の声真似は万全みたいだね」
昼頃、電話の元に向かうと、そこにはニッキーどころか、大樹・杠の二人も居た。
ああ!と頷くニッキーに、よーし、じゃあゲン君、私にも一旦台詞一通り聞かせて~?とマイクにしゃがむ。
「Hi! I’m Lillian Weinberg!!」
「おっ!!これなら100点だよ、ゲン君!!続けて!」
はいはーい、と残りのテンプレの台詞を繋げる。
微妙な訛りまで短期間でしっかりものにする辺り、流石はプロだ。
「おーし、じゃあケータイ作戦行くぞ!葵、呼び出すリストがあるんだろ?」
「うん!寝返りやすい人リスト!!」
「ドイヒーで直球過ぎない!?名前!!」思わずゲンの突っ込みが入る。
「まあこういうのは日頃から司帝国に不満があって、かつリリアンちゃんや私が好きな人から行った方がいいし!それと氷月とか司君直下の部隊じゃない人!!その方が彼等に伝わらないし!」
あーうん、それはそうね…?とゲン。
早速、メンバーに声をかけて連れてくる。
「あ、ハルキ君とソウマ君だよね?ちょっと来てくれないかな~」
「「え」」
「みんなに聞かせたい『特別な』歌があるんだ~!」
そう葵が声をかけてまわる。特別な歌、の一言で割と簡単について来た。
こうして第一部隊を連れてきてーー
「「「「「「……ケータイ…!?」」」」」
「うん。…私の大事な友達からメッセージだよ」
そしてレコードの曲が流れる。
リリアンだ!この歌…歌唱力…ホンモノだ!!
歌に続き、ゲンの声真似が入る。
流石ニッキー先生のしごきとゲン本人の努力の甲斐あって、初回は無事に成功した。
「皆いいの?私の友達に協力してくれる…?」
そう静かに涙をつう、と零しながら言う葵。元の美しさと演技力をフル活用した念押しである。
「ああ!もちろんだ!」「俺らも正直、こんな昔みてえな生活飽きてたし!!」「アオさんの為ならひと肌脱げます!!」
その言葉に、有難う…!と涙を拭う。
……背後でニッキー達はドン引き。大樹は一緒になってうおおおお!!いい話じゃないかーー!!!とガン泣きしていたが。