第11章 【第3章】気を許してはいけない人
(……暖かい)
冬だからか。やはり人肌というのは温かいものらしく、葵はその白と青に真っ白い雪の様な肌という寒色系の色彩に見合わずポカポカとカイロの様に温かい。
普段から迷惑かけられてるし、別にこれくらいは…
そう思いながら、彼女をそっと抱きつつ、目を閉じた。
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「…………」
目が覚めて、横で目を閉じている葵の姿。
……まさかまだ目が覚めて無いとは……。
そう思っていると、ズカズカと誰かが近づいて来る音がした。やばい。離れないと
「ふにゃ…」むぎゅう。相変わらず葵が引っ付いて来る。
そんなに僕がお気に入りの玩具なのだろうか?
「ちょっと!羽京!!いい加減来なよ!朝ごは…………あ」
「あっ………」
彼女をひっぺがそうとしている間に、ニッキーがやってきた。葵が僕の服を握ったまま、すやすやと寝息を立てている。……当然同じ布団の中で。
「あ…朝ご飯の時間だけど…じゃ、邪魔したね!?飯は取っとくから!!好きな時間に来な!?」
「いや待ってたすけ…」
シャッ、とカーテンが閉まる。
ああああああああぁぁぁ……
頭を抱えたくなった。これは完全に言い訳が出来ない。ニッキーはその手の話を言いふらしはしないだろうが…誰よりもその心根は『乙女』だ。
完全に誤解されてるだろう。
「…はあ……もう、君のせいだからね?」
ヤケになって、こつん、と軽く額を小突く。が、反応無し。これでもか、と喉元を猫の様にくすぐる。
「ふにゃ~~」気持ちよさそうにしている。
……この子は前世絶対猫だろうなあ…、それも飼い主を困らせるような。
…んん?待て。それだと今世の飼い主が僕になるんじゃ……
訂正、野良猫で。
そうしてる間もすやりすやり…と気持ちよさそうに人の布団の中で寝ている。
「…はあ。もう知らないから…」僕はそっぽを向いて、仕方なく彼女と同じ布団の中で丸まった。
…彼女から出た熱気で温かな布団が、僕を迎える。自衛隊時代にはやらなかった2度寝どころか3度寝をしたのだった。
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「…き…さー…ん」
僕を呼ぶ誰かの声がする。誰だ………
「ひゃんっ」
可愛らしい悲鳴が聞こえた。んん、と目を開けると、ぷるぷるしながら僕の腕の中に収まっている葵と……覆い被さる様になってうつ伏せで寝ている僕が居た。