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僕と彼女の声帯心理戦争

第11章 【第3章】気を許してはいけない人


……夢だろうか。

僕ーー西園寺羽京はと言うと、1月からずっとひと月以上にかけて、葵の監視役と、司との密会時誰にも聞かれない様にする役割をしていた。


だからこれはーー夢だ。


目の前ではコロコロと鞠の様な物を弄って遊んでいる子猫。白銀の毛並みに、蒼い海の様な瞳。
見た目は上品で大人しそうな猫だが、鞠で遊ぶのに飽きたかと思うと、今度は手近な木を引っ掻いたりしている。今度は裁縫用の布に埋もれては引っ張ったりしている。

しまいには僕の元にトコトコと遊んで~と言いたげに擦り寄って来た。僕はご飯を食べているのに、グイグイ頭を押し付けてくる。

……このしつこい位に擦り寄って来る子猫は……
まさか、葵だろうか。
とうとう夢にまで追いかけて出てくる様になったかと思いつつ、しゃがんで喉元を撫でると、気持ち良さそうにぐるぐる~と喉を鳴らす。

撫でるのを辞めると、今度は待って待ってと追いかけては、あぐらをかいて座った足の中によじよじと登ってきてはくるりと一回転周り、やがてすっぽり足の中に収まる様に丸まって眠った。

……現実の彼女もせめてこうであればいいのに、とクスリと思った。これぐらい可愛げがあればせめてーーー


………えっ…可愛げ?彼女に??
そう思った所で、目が覚めた。

「…………」

変な夢を見た。それも、なかなかに不本意な。
はあ、と息を吐いて右手ーー通路側を見てびっくりした。

……何かが床に転がっている。
そーっと覗くと、すーすーと息を立てて寝ている葵だった。

なんでこんな所に……と思いつつ、先程夢に出てきた猫の首根っこを掴む様に、くい、と服を引っ張る。

「ふにゃぁ……」少し首が閉まったのか、そう苦しげな声を出す。
もう朝なのだが……僕の目を掻い潜ってまで勝手に寝室に潜り込むとは。というか僕、一応異性なんだけど…。

仕方がない。女の子をこんな所で寝かす訳にもいかない。

葵を無理やり抱き抱えて、布団の中に押しやる。だが何故か自分の服の袖を離さない。

「ちょっと…?夢の中の君の方がまだかわ…」
自分が言いかけたセリフで赤面した。
可愛い??こんなはた迷惑でしかない彼女が?恐らく自分にだけ素の姿を見せて、甘えて来るのが??

(まさか、そんな……)
そう思いつつ、もう半ば投げやりに一緒に布団に入る。
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