第7章 【第2章】謀略の議会
司はにこにこと好意的な意見を述べるがーー恐らく氷月は…
嫌な予感のまま、羽京は氷月を睨んだ。
ですね、無くてはならないのは間違いないでしょう。と肯定する。ではーー
「ーー彼女が自身のカリスマ性を盾にして反旗を翻す可能性は、無いのですか」
「「!?」」
司と羽京の目が見開かれる。…羽京の見た限り、葵が接触したのは昨日だけだ。しかも何か取引をしている様だった。
ーーこれも、取引内容のひとつか?でもわざわざ自分から自分の立場を悪くする様な真似を?何故?
疑問に思う間に、淡々と氷月が述べる。
「彼女は今や帝国内の多くの人の心を掴んでいます。変に野放しにして、司クンに反旗を翻す様可能性もあります。
私達が科学王国との戦争で有利なのは『武力』ーーひいては復活液を牛耳る事による人材の多さです。ですがもし仮に彼女が人材を牛耳る様な事があれば」
「……千空達との戦争に不利になる、か」
司が後を引き継いだ。ええ、と氷月が同意する。
「彼女は私達が復活させた人材ではありません。そうである以上ーークーデターの可能性も視野に入れないといけません」
司が少し沈黙した。
「…うん。君の主張は分かったよ、氷月。…それで、君としては具体的にはどういう処遇が適切だと思うかい?」
「そうですね…私としては、正当な理由の元で現在の監視状態から監禁状態へと移行するのを希望します」
「…扱いを間違えれば、彼女を信じているファンから反感を買いかねないからか」「ええ」
氷月が頷く。
「……うん。確かに彼女の力は強大だ。『歌』を武器に、今や多くの人から信頼も得ている。けど、俺はそれなら今の監視状態の存続でも、特に問題は無いと思うな」
現に彼女は問題を起こすどころか、貢献しかしていない。監禁までする必要は無いかな、と司が付け加える。
「ですが」あの氷月がここまで言われて引かない。…羽京はとてつもなくイヤな予感がした。
「……監視役の羽京君の報告によると、彼女は自由自在に声を変えて、演技をする事ができるそうです」
「…!?」「ッ……」
やられた。自分しか知らない事情を、氷月が言ってしまった。
「どういう事だい?」「そのままの意味です。彼女は狙った音を正確に機械の様に、感情まで込めて出せます」そこでチラリ、と氷月が羽京を見た。
ーー氷の様に冷たい眼差しで。
