第12章 【第3章】心の中に居た人
「確かに……」フム、とニッキーが考え込む。
もう恋愛路線から外れるのは無理な様だ。人間、時には諦めも必要だ。私は観念した。
「え、でも葵ちゃん……その前に…」少し言いづらそうにする杠ちゃん。
「ああ……結婚してた人の事?」
「!?…アンタ、結婚してたのかい!?」この場で唯一知らなかったニッキーが驚く。無理もない。
この帝国内部で知ってるのは、司君、羽京君、杠ちゃん。そして腐れ縁で縁談話もあった氷月。この4人位のはずだから。
「そうだよ~、それでいて未亡人」
「……そうだったのかい…」
「でも、恋愛結婚じゃなくて、お互いに尊敬してたから結婚しただけかな~。」
へえ……と高校生二人が知らない世界を見る眼差し。
当然だ。この子達の年齢じゃ出来ないし、ましてやこのストーンワールドじゃ『結婚』の制度すらもう無いのだから。
幻を見る様な眼差しになるのは仕方の無いことだ。
「そうか…アンタも大変な想いをしてきたんだね…」
「ありがと、ニッキーちゃん」
……ヨシ。羽京君からは話を反らせただろう。
「結婚自体は、紙切れひとつ出せばできるし~。結婚が特別…って訳でも無い、と私は思うかな~。
それより大事にしたい、と思った人と自分がどういう関係で居続けたいかとか、相手に何をしたいとか…そういうのの方が大事だと私は思うよ」
今じゃ結婚制度自体はもう無いけど、そういうのならまだ身近にならない?
と問いかけると、二人はまるで生徒の様にうんうん、と頷いている。
「……葵、アンタなら、大事な人にどうして欲しい?結婚までしたアンタの話が聞きたい。
ニッキーの突っ込んだ質問に、私はうーん…と唸る。
「……相手にどうして欲しい、か…。あまり考えた事ないな……」
「「え」」
「せめて、自由で居て欲しいかな。こっちからした事に対して、向こうからのお釣りとかお礼とか、お返しとかは要らないなあ。ただ……
自由に思うがまま生きて欲しいし、少しでも息をするのが苦しいなら……助けたいかな」
「……なんだ。アンタ、誰も好きになった事ないどころか、めちゃくちゃ大事にしてんじゃないか」フッ、とニッキーが笑った。
……大事に、してる??私が??……××君を、リリちゃんを……それから……