第12章 【第3章】心の中に居た人
だから裏を確実に取り、雪解け直前ぐらいを目安に来ると予想、こっそりと『寝返り』の算段をしていた。
私が司君と氷月の間に割り込む形で、上手く帝国内の近郊は保たれている。順調だ。
ちなみになんで真面目な話を並べ立てたのかと言うとーーー
今、目の前でニッキーから爆弾発言が出たからである。
「葵……アンタ……その…羽京と付き合ってんのかい……??」
「くぉるっふぅい!!」
素で変な声を出して思いっきり針を変な所に刺してしまった。
まだ指じゃないからいいや……と思うも、どうも手元が狂いかけたのは私だけではないらしい。
「わあお!!」杠ちゃんもリボンの形に切るのを間違えかけている。危なすぎる。
ここは杠の手工芸室。『女子会』『男子禁制』の名のもと、ここには羽京君自体は居ない。まあ、監視役だし、羽京君の耳は超越的だからどこか遥か遠くで大樹のクソデカボイスと共に過ごしつつ聞いてるだろう。
しかし、まさかこの様な手合いが来るとは…。ふう。
息を整える。
ニッキーちゃんの担当はリボンの染色だ。そして私と杠ちゃんの手工芸チームがリボンを型通り裁断したり加工したり、私が直筆サインを縫い入れる。
作業の終わったニッキーちゃんの開口一番がこれだった。
『おおー!!実に女子会っぽくていい話題じゃないかーー!!!』
私は脳内に大樹君を召喚した。……大樹君、そもそも女子会よく分かってないからこんな事言わないな………却下。
私はこんな感じで、周囲の人間の思考回路と回答を大体予測するプログラムみたいなのを組んでいる。
こうすれば、他の人の行動は予測出来るし、いざとなった時に自分では出来ない考え方が出てくる。
軍師と呼ばれるならこれくらいは当たり前だ。
次。司君。
『うん……恋愛の話なら盛り上がるだろうね。ただ内容が少し穏やかじゃないな』
同感しかない。けど解決にはならない。却下。
次。氷月。
『ハァ…これだから脳の溶けた人間は…』
絶対ロクな事言わないな。却下。
次。羽京く…いちばん聞いちゃ駄目な人じゃん!!
ある意味司帝国内ではいちばん常識人だと私は思うけどこの場では頼れない!!!!
…が、聞いておく。
『え?僕?……あはは、そういうのはあんまり詳しくなくて……分かんないや』
激しく同意しかない。もう羽京君に全部丸投げしたい……
