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僕と彼女の声帯心理戦争

第12章 【第3章】心の中に居た人


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(今のって…)

羽京は上機嫌で歩く葵の背中を追いつつ思考する。
まさか、好みの料理が知りたかったのだろうか。今まで振り回したり、何故か異様に監視役を僕に押し付けたがったり。

今では司との『三顧の礼』が成功し、僕達上層部の間では『軍師』として国力増強に励んでいる。
が、自分に構ってくるのは相変わらずだし、奇想天外な振る舞いで驚かせたり気を引こうとするのは相変わらずだ。

……まさか。いや、まさかだけど……
僕の事が、好きなのか……??この女の子が……??

でも、そう考えれば最初から辻褄が合ってしまう。
噛み合わないぎこちない歯車が噛み合うのだ。
彼女が最初に起こした行動である石像破壊の制止も、科学王国のスパイとされる大樹・杠への接触や科学王国の極秘のミッションの手助け。

……彼女自身にはまるで『芯』が無い。
何も大事なモノは無い、大事な人は居ないと言うくらいに。

(でももしーー彼女自身気付かないうちに、僕の望む世界を作ろうとしてるなら)

僕は。君だけにその重荷を背負わせるつもりは無い。
彼女の後ろ姿を見ながら、静かに羽京は決意した。


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最近では、司君・氷月・そして私の三者で力を分けて待つ『天下三分の計』が功を奏して、上手く帝国内秩序を保っていた。

私が発案した『目安箱』も好評である。
司帝国民から『匿名』で意見を受け付ける、という名の下、『司君発案』という体裁の上、私が依頼された~という口上の元、
皆から不平不満しかり改善点を集めては司君に献上した。

やはりみんな、司君本人には言いづらい事をのほほんとした私なら…と私を見かけ次第、意見を出してくれる様になった。今では私に対する司君の信頼もそれなりに得ている。

……進言した通り、完璧な信頼を部下に置くな、と言ったようにあくまで別の人間として考えてくれてるようだ。司君は確かにカリスマ性も学力も知力もある。だが、こうして人の上に立って国を運営する経験は無いはずだ。

私の家は旧い家で、知将として先祖が名を馳せた。そのせいで計略の類いは幼少期に叩き込まれている。幼少期の家同士の縁で知り合っていた氷月とも、まあまあ上手くやれていた。

氷月とは同盟関係を結び、ちょくちょく連絡を取っている。私の予想だと、司帝国が冬季に大軍を率いて出撃できないのは敵も分かっているだろう。
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