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僕と彼女の声帯心理戦争

第11章 【第3章】気を許してはいけない人


俯きながら思案しているようだった。
「確かに、何かを与えられるのを待ったりはしません~。良くも悪くも期待をしないといいますか、割り切ってるのは自覚あります~」

ーー彼女はその本性を現した時に言った。

『西園寺羽京君。私と『戦争』をしましょう?私の声帯と君の聴力。どっちが勝つか。私の心を読めれば勝ち。もし読めなければーー』

僕はその戦争に乗った。しかしそもそも彼女の場合は……

「感情が…無い……?」
「………それは…私のことですか~?」
しまった。口に出していた。

「それは言われた事、無いですね~。お人形さんみたい、とは言われますが、見た目の事なので~」
「ごめん……別に傷付ける気は」「どこがです?」こてん。彼女が首を傾げた。

「いいじゃないですか、別に。『余計なモノ』に振り回されなくて」ふんわりと彼女は笑う。

感情が、余計なモノ??……どうして??過去に嫌な想いをしてきたから??

「……本当に?」「?…はい」「じゃあ…もしも僕が」ドクン、ドクン。今から言うことが正しい事なのか、分からない。だが、それでも聞かなくてはならないーー

「君の前から居なくなったら、どうするの?」
「………………」
不気味な程の沈黙が続いた。

「居なくなったら…ですか」俯き、彼女の顔に影が落ちる。流石に、意地悪な質問をしたかもしれない…

「……私はひとりがデフォルトで基本ですから。寂しくはあるかもですが~、大丈夫です」
「つっ…………!!!」

猫という生き物は、生前は散々遊び回り迷惑をかけたかと思うと、死ぬ間際になると何故かその瞬間を見せまいと勝手に居なくなってしまうらしい。

まるでそれと同種のーー下手したらもっと悪質な反応かもしれない。

『寂しくはあるかも』確かにそう彼女は言った。
所詮、僕はその程度の存在なのだろう。
都合のいい玩具。暇つぶしの相手ーー

「うきょーさん」

ハッとして葵の声に導かれ顔を上げる。心配そうに子猫ーー葵がじーっと自分を見つめていた。

「……私の回答、ご不満でしたか」「…そうかもね」適当にはぐらかす。
「じゃあ言い直します~」嫌な予感がする。



「寂しいし悲しいし、構って貰えないし、
ご飯食べて貰えないの辛いので……強要はしませんが…なるべくお傍に置いてくださいね」ふわり、と。包み込む様な笑顔。
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