第50章 最後のデート
「(私の恋人は本当に嫉妬深い…)」
「オレの気分損ねた代わりに、オレの方がカッコイイって褒めろ」
「えぇ……」
ライオン(オス)を褒めたのがまずかったのか、それとも"カッコイイ"と口にしたのがまずかったのか。どちらにせよ、マイキーの機嫌を損ねたのは確かだった。
「(周りにたくさん人がいるのになぁ…)」
家族連れやカップル、大勢の客が猛獣コーナーに集まっている中、自分は目の前で不機嫌になっている恋人を褒めなければいけない。
「カノ早く」
急かすようにマイキーが繋いでいる手を軽く引っ張った。カノトは相変わらず年下の恋人の我儘に呆れつつも、お願いは拒絶したりしなかった。
「前から知ってるじゃないですか。私が一番カッコイイと思っているのは他の誰でもない、万次郎くんだけだって」
「ウン、知ってる。でも可愛いカノジョからの褒め言葉は何回聞いたって嬉しいんだよ」
「……………」
「オレ、世界一カッコイイ?」
「世界一カッコよくて…最高の恋人ですよ」
「そっか」
照れながら言うと、その答えに満足したのか、マイキーは嬉しそうな表情を浮かべた。
"あのライオン(♂)、カノに惚れたら困るし、さっさと次に行こ。"と呑気に欠伸をしているライオンの檻から離れ、二人が次に向かったのは…。
「初パンダ!可愛い!」
「ライオンの時と比べてテンション高ぇじゃん。そんなにパンダ見たかった?」
「だってパンダは愛くるしい見た目じゃないですか!ぬいぐるみみたい!」
先程の猛獣コーナーとは打って代わり、芝生にちょこんと座って片手で笹を食べているパンダを見てカノトは興奮していた。
「はしゃぎ方が子供なんだよな。カノが大人とか嘘なんじゃねぇかって思うわ」
「い、いいじゃないですか。大人でもパンダの愛くるしさには勝てないんです」
「写メ撮れば?」
「そうですね。可愛い姿をバッチリ撮ります!」
「(可愛いのはオマエだっての。)」
カメラモードを起動し、携帯を構えるカノト。そんな恋人の楽しそうな姿を見たマイキーも自分の携帯を出し、パンダに夢中になっているカノトの可愛い姿をこっそりと撮るのだった。
.