第50章 最後のデート
電車を乗り継いで動物園に着いた二人は、購入した券をスタッフに見せて入園ゲートを潜った。
「休日でもやっぱり混んでますね」
「天気もいいから余計だろ。さて…どこから回る?カノ、見たい動物いる?」
「ウサギとかパンダが見たいです。あと万次郎くんが見たがったライオンも」
「なら気になるトコ全部見て回ろうぜ。祭りの時みたいにさ。まだ時間もあるし」
「そうですね。ちなみにスタッフさんから貰った園内MAPを見ると此処から一番近いのは猛獣のコーナーですね」
「猛獣ってライオン以外にも豹とか虎もいるんだろ?すげぇ気になる!早く行こうぜ!」
「あ、待ってください!万次郎くん…!」
楽しさで心が逸るマイキーに手を取られ、引っ張られるような形で後を着いて行く。
◇◆◇
「間近で見ると迫力が違いますね。あんなのに襲われたら一溜りもないです」
「オレの蹴りなら一撃で仕留められんな」
「相手は百獣の王ですよ。人間が最強動物に敵うわけないじゃないですか」
いくら"無敵のマイキー"の核弾頭のような強烈な蹴りでも、流石に獰猛なライオンには手も足も出ないだろう。むしろ狩られる。
「アイツらってネコ科だろ?猫じゃらしで手懐ければ勝てんじゃね?」
「猫じゃらし如きであの獰猛な肉食獣を操れると思ってるんですか?絶対に無理ですよ」
「けどあんなに凶暴で獰猛なヤツらがさ、千冬ん家の猫みたいに喉ゴロゴロ鳴らして猫じゃらしで戯れてたら可愛くねぇ?」
「それは確かに可愛いですけど…。でも私の中でライオンは可愛いと云うよりはカッコイイの方がしっくりきます」
"ほら、あの鬣なんかカッコよくないですか?"と茶色い鬣が似合うライオンを見ながら言ったカノトに、マイキーは眉間を寄せて面白くなさそうに顔をしかめる。
「全然カッコよくねえ。あんな肉食動物より、オレの方がカッコイイに決まってるし」
「!」
「オマエがカッコイイって褒めて良いのはオレだけなんだよ。他のヤツを褒めるとかぜってー許さねぇから」
「褒めたの動物なんですけど…」
「動物でもオスには変わりねーだろ!」
恋人が自分以外の男(オス)を褒めるのが許せないマイキーは檻の中にいるライオンを恨めしげに睨む。
.