第41章 絶対的な『王』の名は
「(早く二人を追わないと…!)」
すると少し離れた位置にタケミチとナオトはいた。カノは安堵の表情を浮かべ、二人に声を掛けようとした時…。
「!」
タケミチを狙うように横から銃を向ける人物が現れた。物陰に隠れて姿は見えなかったが、その人物が前に出てくると、正体がハッキリ見え、思わず叫ぶ。
「っ、稀咲───!!!」
タケミチも稀咲が現れた事に驚きを隠せないでいる。自分に向けられた銃。稀咲は今、その銃のトリガーに指を引っ掛けていた。
「死ね」
ニヤリと不気味に笑った顔で、稀咲はタケミチに向けて引き金を引いた。
ドンッ
銃口から発射された弾丸は一直線にタケミチに伸びる。
「タケミチくん──ッッ!!!」
カノが悲鳴に近い声で叫ぶ。
だがその瞬間、タケミチを突き飛ばし、彼の命を守ったナオトが身代わりとなって撃たれ、地面に倒れ込んだ。
「ナオト…?」
「ナオトくん!!」
「ナオトぉお!!」
タケミチは慌ててナオトに這い寄り、ぐったりとした体を抱き起こす。銃で撃たれたナオトの体は血で真っ赤に染まり、彼が倒れている地面にも大量の血溜まりが広がっていた。
「ちっ、余計な事を…」
「しっかりしろナオト!!」
「タケミチくん診せて…!!」
着ていた上着を脱ぎ、撃たれた箇所にそれを被せ、両手でグッと押さえつける。
「ナオトくん!しっかり!」
「助かるよな!?」
「…分からない」
「え!?」
「出血量が多い。一般に体内の血液の20%が急速に失われると出血性ショックで重い状態になるけど、30%を失えば生命に危険を及ぼす。だからお願い…これで止まって!」
服に染み込んだナオトの血が止まらず、押さえつけているカノの両手が血で染まる。そんなことを気にせず、止血する事だけを考えるが、一向に出血は治まらず、カノの顔に緊張が走った。
「(冷や汗と体の震えが止まらない。既に20%は流れてる。このままだと本当にまずい…!)」
「タケミチ君…カノさん…逃げて…」
「喋らないで!!今救急車を──……」
「オイオイオイ。橘ナオトは俺が殺すはずだろー?稀咲ー」
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